令和時代を読む~デジタルの箱庭からアナログの大海では、センシングが主役

 

令和時代を読むに際し、昭和の高度成長期以降は振り返れば、米ソ冷戦、米の核の傘の下、中国も共産主義に留まり、円安、エコノミーにフォーカス、輸出モノづくりを謳歌した時代だった。

 

キーテクノロジーは、メインフレーム、ピラミッド型の階層の中でプロセッシングが大きく、組織構造も、ケーレツであれ、企業内であれ、ピラミッド型の秩序であった。それが、冷戦終了、中国も資本主義を取り入れ、円高に是正、欧米イノベーション模倣、低コストによる輸出型モノ作り型のビジネスモデルは、まずは台湾や韓国、そして中国に取って代わられた。

 

平成のキーワードは、フラットとネットワークである。ITはメインフレームからPCへ移行し、それがインターネットで構築され、さらに、PCからケータイ、スマホへと進化した。その過程で付加価値は、ハードからソフト、ソフトの中でコンテンツが重要となり、それを支えるプラット・フォーマーが有利となった。

 

組織構造も、業界でも企業内でも、フラット化が進んだ。この中でデジタル化が進み、「量産モノ作り×輸出モデル」は、日本から韓国台湾を経て、中国が中心となり、表裏一体だが、米国では、「ソフト×ビジネスモデル」、また、金融とDXの中でのプラットフォームを支配した。

 

プラット・フォーマーは、当初はWintelであり、次第にGAFAとなった。ただ、DXといっても、データの元は、金融や流通の経済データ、いわば、「デジタルの箱庭」とも言うべき、サイバー空間だけのデータが主であった。

 

令和時代には、5Gが契機となり、こうした状況を変える可能性がある。そこでのキーワードは、IoTであり、CPSだ。すなわち、「デジタルの箱庭」の外には、自然界に無限に潜在する豊富な単位系を持つ物理や化学や生体データがある。これを、カメラの画像センサーやマイクだけでなく、五感に相応するセンサーから、ビッグデータを取得できる。ビッグとは、量だけでなく、多様性やフローも含めてである。この人間も含めた自然のデータを取得、利用して、生産や交通、医療などに役立てるのが、CPSである。

 

サイバー空間の統計など経済データは、GAFA等プラット・フォーマーにより、クラウド上で、データセンタに蓄積され、AIにより解析されるが、フィジカルデータは、リアルで余りにビッグであり過渡的ゆえにクラウドに挙げているゆとり(時間的にも容量的にも)がなく、エッジ側で処理しなければならない。

 

ここは、GAFAでなく、豊富な現場データにアクセスできる日本に機会がある。そこで鍵になるのは、現場データと、センサー、そしてエッジコンピューティングの力だからだ。すなわち、令和の時代は、生の腐り易いデータが豊穣に広がるアナログの大海において、センシングが鍵になろう。そこでは、ローカル5Gに象徴される、「技術×戦略(ビジネスモデル)」が日本復活の鍵になろう。

 

ITの発展は、プロセッシング、メモリ、ネットワーキング、センシングがバランス良く発展してきた。

 2020年以降は、まさに、センシングであり、現在既に大きくなっている画像(視覚)から、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などへ広がる。その適用場所も、スマホ等の11台の個電から、家電、オフィス、工場、公共に広がっている。個電のスマホは使用頻度多く使用者密着ゆえに、五感やUIが豊富であり、視覚、聴覚、触覚は、入出力3(触覚は一体)3パネル、3カメラ、クルマでは入出力合わせ現在5/台⇒10個以上となり、使用頻度・密着度に応じて、クルマ、オフィス、町に普及が広がっていこう。次は音と、触覚・ハプティックが急拡大している。さらに、今後は、嗅覚、味覚、脳波など第六感は面白そうだ。スマホでも、台当たり10-20のセンサー・UIになっている。

 

日本の生きる道

 

 これまでのイノベーションは、科学的知見とモノ作りなどの掛け算が多かったし、日本が得意な領域だった。しかし、これからのイノベーションは、科学技術と経営戦略の掛け算になる。

 

スマホ、ADASCASE、ドローンなどの有望技術を階層化して分析すると、上位階層は、ソフトというよりは、むしろ、リカーリングやプラット・フォーマー等のビジネスモデルとなっている。

 

ここは、金融や契約なども重要であり、米中が強い、その下のハードやデバイスが日本や韓国台湾が強い領域だ。

 

 そこで、日本が進むべきは、上位階層へ行くか、強い下位階層を強化し、韓国台湾や中国の参入を防ぐかである。

 

DX化で、弱い階層をある程度強化するのは賛成だが、世界の業界ピラミッドの中で、上位の金融、IT、エネルギー(メジャー)を支配するのは米であり、ここに勝つのは難しい。

 

そこには、世界の最優秀の人材が集まり、税制や教育制度や文化面の優位性がある。明らかに、日本が勝てる相手ではない。他方、米は、業界や専門で、格差が大きく、モノ作り、特に、精密メカトロ系や化学など材料系では、あらゆる業種、専門分野に、満遍なく人財が集まっている日本に相対優位性が残っているだろう。また、業種や職種や地位などによって、人材能力格差が大きい米と異なって、日本は、地位や学歴、業種職種で、それほど大きな差がなく、精密や化学など分野のモノ作りでは、有利に働こう。

 

要は、縦軸を実力、横軸を社会の位置づけとした場合に、日本は、傾向線の傾きがフラットに近く、米は傾斜が高く、棲み分けがあったのだが、この傾をより米に近づけるのか否かが政策課題でもあろう。