半導体市況~統計と実感に違和感

 

先に、半導体市況に関して、WSTS統計が2019年はマイナス13%とリーマンショック以下、2020年は数%増の成長を見込んでいると、紹介した。予想はともかく、2019年は統計上実績に近いだろう。

 

 業界関係者と議論したが、2019年がリーマンショック以下というのは実感から程遠い。確かに、当時は急な落ち込みであり、年間にならすと、少し平均化されるとはいえ、設備投資は急減速、工場の稼働率は低下、株価も急落、リストラが厳しく、悲壮感が漂っていた。予想にしても、足元、メモリは上昇、設備投資再開の動きが急であり、数%増というよりは、二桁増の印象だ。MLCCもひっ迫という。

 

 これをどう解釈すべきだろうか。

 

A説は、何度も指摘している統計不備であり、WSTSの補足率は6割程度であり、鉛筆を舐めて作っているという批判もある。特に新興企業や、GAFABATHも入りにくい。

 

B説は、やはり統計が正しく、確かに2019年の数字もメモリが30%以上の減によるものであり、それもほぼ価格で説明できる。2020年も、足元の活況は旧正月前の駆け込み発注であり、それほど強くはないというものだ。

 

C説は、業界構造の変化であり、統計上に現れないGAFAのデータセンター投資などが反映されていない、あるいは、サブスクリプションモデルなどビジネスモデル変化もあり、大きく調整しにくい構造になっているとう説である。

 経営者や現場の心理が、ビジネス行動に現れ、数値化され、それを予測分析屋のセンスで補足して、統計や予測となる。そうであれば、結局は、ビジネス関係者の心理が元であり、それをアンケートか脳波測定で数値化するなど、ビッグデータやIoT的アプローチで、数字にした方が現実を反映しているかもしれない。その意味では、人間集団が、偉大な経済統計センサーである。