COVID19影響について

 

COVID19の影響が大きくなっている。第一は、病気の感染力および重篤化の脅威、第二が、中国での生産停止やサプライチェーン混乱が予想以上である。

 

 中国でのCOVID19の感染者累計数は、S字カーブを描いている。いずれ、専門家から、詳細なモデル化が発表されるだろうから、ここでは、簡単に記すが、中国では、春節後、徹底的な都市封鎖を経て、2週間程度(これが潜伏期間と近いが関係は不明)を経て、ピークを迎えている。武漢などの人口を1000万人とし、これを分母とすると、8%程度だ。他方、死者数はまだピークアウトしていない。

 

 感染は、マスクも大事だが、手指やエアロゾル感染など他からも多いが、この連休もイベントに参加するなど危機意識が薄い国民が多く、呑気さに驚く。始動はダメだったが、その後は都市封鎖等徹底した中国とは真逆だ。日本の今の状況は、春節手前だとすると、徹底封鎖をしていれば、2週間後の3月中旬にピークを迎えることになる。そのピークは、湖北省が人口6000万人、面積18万㎡と日本の約半分の規模であり、これを参考にすると、早晩、日本も数万人規模となる。

 

日本は、医療インフラが進んでいる一方で、この連休でのイベント、入試、卒業式、呑気な国民性を考慮すると、武漢より危険だろう。

 

 そうなると、3月上旬が武漢の春節に近く、ピークは4月頃となり、やはり、数万人の感染者、医療破綻の危機を迎える。

 

現状の中国など

 

 現状での経済影響だが、各種報道では、中国での工場停止やサプライチェーン混乱である。春節後に工場に戻らない、着装が必須のマスクがない、などで工場が動かず、現状の稼働率は1-2割が多いようだ。特に、3-4月の出荷を前に、人手が多い後工程の影響が大きい。

 

 鴻海では、中国工場の操業目標を2月末50%3月末80%としていたが容易ではないだろう。サムスン蘇州では210日に操業開始で稼働率90%だが、梱包材不足で出荷見合わせ。TSMC上海も、稼働遅れ。テスラ上海は稼働50%だが社員復帰は1/3程度。台湾のEMSODMは、部材不足サプライチェーン混乱に加え、マスクや防護服体温計不足で開店休業状態が2ヶ月続きそう。台湾は中国依存度が大きい上、在庫が効率性から、他国の2ヶ月に対し、1ヶ月しかなく厳しい。鴻海のiPhone工場では職場復帰奨励金4.7万円をだすほか、マスクの生産を、100200万枚/日で対応。

 

なお、iPhone工場別では、蘇州40~60%稼働、深圳で30-50%稼働、太原とインドで、これからで限定的。ペガトロン上海は90%、昆山40~60%。いずれも、稼働開始が1-2週間遅れているようだ。

 

 不足部品は、MLCC、インダクタ、放熱モジュール、レンズ(武漢には光学関係が多く、光ファイバーケーブルの世界シェア25%という)、パネル、タッチ、フィルム等の化学素材、薬液、ソーラー向け単結晶シリコン、ガラス、アルミ部品などだが、最大は人不足。MLCCでは、Yageoが、在庫日数が50日とy/y半減とし、2-3割値上げのようだ。

 

影響度合い

 

鴻海では、2020年の成長見通しを3-5%から1-3%に下方修正。スマホ台数は、5Gスマホを2.22.1億台、うち中国メーカー1.251.15億台(JPモルガン)、中国全体スマホは、q/qで半減、通年15%(Canalys)である。

 

世界スマホQ112%減の2.75億台(TrendForce)、この中で、サムスンは3%下方修正の7150万台、HW15%下方修正の4250万台、アップルは10%下方修正の4100万台、シャオミは10%下方修正の2470万台、OPPO14%下方修正の2400万台、VIVO15%下方修正の1700万台。これら上位社で2500万台の下方修正だ。

 

世界全体では、5000万台の下方修正だが、20201Hに集中しそうであり、他方、サプライチェーン混乱での部材不足との関連で見通しが難しい。

 

 次世代iPhoneの技術検証試験(EVT)も、6月のPOCに向け、2月予定が遅れそう。これが大きいかもしれない。

 

 PCやクルマも同様だろう。もちろん、消費や旅行への影響、製造装置の納期延期キャンセルもある。

 

マスク生産

 

 今回、サプライズは、マスク生産だ。BYD子会社は、217日から量産対応、2月末には、マスク日産500万枚、消毒液5万本、異業種も含め、10社程度が、一斉に、2月末能力を200万枚程度としている。このスピードと生産能力は見倣うべきだろう。

 

これからの日本

 

 このように、春節後のサプライチェーンは悲惨であり、人不足、材料無し、陸運封鎖であり、稼働率は、1050%以下であり、実態はもっと厳しいだろう。幾つかの在庫は2月末になくなるようだ。既に、スマホも、1Qの中国スマホは、q/q半減、世界全体でも年間も数%ダウン。海運市況も悪化している。

 

年度末という、このタイミングはかなり痛く、装置など延期、多くの業種で、1-3月決算は、大幅下方修正、4-6月も厳しそう。その反動で、7-9月には期待したいが、政府対応次第では、オリパラ中止や、日本への渡航禁止も出てくると大打撃だろう。まさに、3.11ショックに近く、それ以上かもしれない。

 

かつて、中国は、SARSを機に、現金が汚い等ゆえに、キャッシュレスなど進んだというが、日本でも、今回の件で、働き方改革も含め、TV会議、在宅勤務、キャッシュレス決済、街中などの監視カメラ(マスク着装、赤外線センサーで体温など監視)普及、工場でもロボット化、自動運転などが進もう。

 

他方、行き過ぎた中国アジア依存や、分散化しすぎたサプライチェーンは、米中摩擦も含め、世界中で見直され、一部は、垂直統合も復活しよう。日本でのEMS等生産も機会があろう。