研究開発費の適正水準と成長率

去る74日の経済教室に、「トップが研究開発を導け~R&D費用の適正水準」と題して、寄稿した。これで、経済教室は通算4回目、97NRI時代にシリコンサイクルについて寄稿、理科大MOTに着任してからは、3回目(今回以外は、東芝問題とJDI問題)である。最初に経済教室に掲載され、当時、慶応大の島田晴雄教授や早稲田の故西村教授から、「これで、アカデミック・デビューであり、一流の証だ、おめでとう、経済教室掲載は、査読論文1本カウントだ」と褒められた。

経済教室は、通常は、一つのテーマに対し、上下、上中下と連続して、複数の著者が書き、比較してもらうという構成であり、今回も私が上でテック企業中心にミクロ視点、一橋大学の岡田教授が下でマクロ視点だった。

これまで、R&Dに関しては、効率性については、数多くの理論・実証研究があるが、あるべき水準の議論は殆どないのである。そこで、この観点から、両方とも、イントロの後、R&D費の正しい計測は難しいことを指摘、その次に、私はテック企業のR&D費率と成長率の関係、岡田教授は国内のマクロ数字を示し、最後に、私は、適正水準をイノベーション期待値とリスク値の均衡を参考にしつつも、縮小均衡ではなく、スパイラル成長になるよう、トップの思想から示すべきだと主張、岡田教授は非製造業のR&D注目すべきだと論じている。https://www.nikkei.com/article/DGXKZO61075760S0A700C2KE8000/  

 

日本企業だけでは、相関が見え難く誤差の範囲だが、海外の事例を見ると、R&D10%以上からは、成長率と一定の相関が見え、5%程度はサンクコストかもしれない。日本の場合は、真のR&Dは公表の10-20%であるとも推計され、R&D基準や会計の差を補正すれば、更なる相関がある可能性もあり、実証を積み重ねていきたい。