我々の8月15日~電機・半導体産業の敗戦

先の大戦から75年。日本は、初戦は勝利を収めたが、米の圧倒的なパワーに負けた。日本経済も、電機・半導体産業も、再び、米に負けた。

GAFAの時価総額や利益の規模、あの戦争以上に、経済「戦争」でも、再び米のパワーに負けてしまったかもしれない。終戦特集の番組で聞く、玉砕などの言葉が、ちょうど、コロナ禍での業績発表、各社の赤字転落下方修正とダブる。

失われた「X十年」と言われて久しい。わが電機・半導体産業は、いつ敗戦を迎えたのだろう。仮にITバブルの頃がそうなら終戦20年だ。あるいは、まだ負けてないのだろうか。マスコミやアカデミックにある日本経営論、ものづくり論議、中国や台湾等への技術流出を恐れているということは、「大本営発表」を信じ、金融政策で株価が上昇していることから、業界以外の多くの国民や一部の政治家やマスコミは、「負けてない」という認識かもしれない。

 先の戦争では、軍部は解散し、重要文書の多くは燃やされ、当事者は公には総括をせず、特に、幹部は、「敗軍の将は兵を語らず」であった。外部者の色々な研究はあり、敗因についてのコンセンサスは醸成されつつあるし、野中郁次郎の「失敗の本質」はその最もたるものだろう。

今回の「敗戦」でも、多くの研究はあるが、前回同様に、当事の幹部の多くは口を閉ざし、実態の本質を知らない者がマスコミや学者に語っているのは、前回と同様である。この男たちの沈黙は、注目している女流作家の赤坂真理が論じている。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62366190W0A800C2BC8000/

実際の戦争と異なり、文書や資料は存在し、元気な存命者も多い。本来は、今度こそ、今こそ、国も産業界も、プロジェクトでも始め、総括すべきである。自身も、業界に関係した「当事者」として、研究を続けているが、時間も余裕もない。今回も、マスコミの責任は重い。平成を総括する伊丹氏の著書はあるが、あまりに気楽な論調であり、総括になっていない。こうした著書が中心となると、それが事実となり、後世の歴史認識を誤るであろう。その意味で、ニッポン電機・半導体産業の「失敗の本質」が必要だろう。

 

 ただ、この国の、特に役所や大企業に多い「総括しない文化」・・これがDX遅れの裏の本質だが・・今回のコロナ騒動でも明らかになったように、75年を経ても変わらない。また、野中郁次郎が指摘した「失敗の本質」も、経済戦争、コロナ禍騒動でも、同じであり、学習効果もない。これが悲しい本質なら、実際の戦争、経済戦争、次は、どういう戦いか、分からないが、無限地獄や賽の河原の石積のような同じ失敗を繰り返すのだろうか。