比較と比較可能性

野村総研時代、新人アナリストの研修で2社比較というものがあり、基本は同業種のライバル2社を、業績、財務分析、経営戦略から比較分析、基本を身につけた。ペアを組んで取り組んだが、トヨタ系の小糸と日産系の市光工業で、小糸を甲、市光を乙とする意図だった。その後、技術もライバル技術を比較するとか、産業比較などに発展させ、MOTでも、経営者比較など導入している。一社だけなら、「高収益」というような形容詞的表現が、「A社の方がB社より高収益」と不等号がつくことで、より客観的になる。

比較する意味

このように、元々は、同業種やライバル関係を比較するのが2社比較だが、これを発展させ、敢えて、異業種を比較するのも有益である。多角化は異業種で行われ、イノベーションを生む新結合は異種であるが、異種を比較することで、違いと共通点が明らかになり、発見も多い。リーダー比較でも、同じ電機のサラリーマン経営者比較もいいが、ベンチャー社長と超大企業の社長比較も面白いし、大学の学長と経営者のリーダーシップ比較でも発見はあるだろう。もちろん、組織の種類や規模が異なれば、比較は難しいが、議論すれば得るものも大きいだろう。

つまり、比較という場合、同数や類似の比較で差をみつけ、甲乙をつける場合もあるが、異種比較で共有点を見つける場合もあるだろう。よく、「アップルtoアップルの比較になってない」と云われるが、アップルとオレンジでも、果物として共通点と差が分かるし、アップルと野球ボールならば、球体の比較になる。形や味ならアップルと梨が近いし、文字ならアップルとパイナップルが近いし、形状なら、アップルと近いボールがあるかどうか。