お陰様で、デジタル列島進化論が出版され、書店にも並んでいるようだ。さて、改めて、不遜ながら、デジタル田園都市国家構想とデジタル列島進化論を対比させてみたい。
デジタル田園都市国家構想に欠けているのではないかと思われるのは、下記である。
第一に、新しい資本主義との関連が薄く、DXありきで、語られており、時代背景を踏まえた議論が少ないような気がする。日本列島改造論では、「新しい資本主義」とは言っていないが、時代認識の上で、明確なビジョンがあり、一貫性あるいはストーリー性(正確にはナラティブ)があった。
第二に、これまでの自民党の政策、アベノミクスはじめ、その総括が不明であり、過去の政策との関連性、継続性があるのか、ないのか、また、他の諸々の政策との関係性がわからない。
第三に、内需が中心であり、輸出政策や、国家安全保障やサプライチェーン改革、更には、為替や金融政策、財政との関連も不明であるどころか言及もない。国内をDXするにしても、国全体として、それぞれの政策のベクトルを揃え、プラスマイナスもある中で、メリハリもあり、時間軸での判断もあるが、不明であり、総括性、一貫性に欠ける。
第四に、これは仕方がないのだが、政策を実行するのは民間であるが、そういう政策の中で、企業の戦略がどうあるべきか、の議論は欠けている。
いわば、上記は、過去の検証や考察が不明で、各省庁やコンサル等に振って、それぞれは知恵を絞ったのだろうが、それを再統合しておらず、バラバラ感が強いのである。これは、日本列島改造論が、田中角栄のリーダーシップの中で各省庁がプロジェクトチームで一致団結して作り上げたものとの差である。ただ、列島改造論も、内需中心であり、輸出政策や企業戦略には触れていない。
これに対して、デジタル列島進化論は、日本列島改造論を総括した上で、時代背景考察の元で、新しい資本主義を定義して、三段階のデジタル戦略で、内需だけでなく、輸出や、若干、金融面、国家安全保障やサプライチェーンにも触れており、その中でのあるべき日本企業の戦略を提言している。統合性、整合性、一貫性やストーリー性があるように、努力したつもりである。もちろん、落としどころは、5G等やデータセンター、半導体や電機に絞られており、それ以外の様々なインフラ、産業の具体性は弱い。そこは、前書きにも書いたように、これを叩き台にして、更に素晴らしいものが出ることを期待している。