社会課題を科学技術が解決

90年に、野村総研の「財界観測」に、「90年代の新技術潮流」を執筆、これを「2000年への技術戦略」として出版した。90年代の社会課題等を3つの不、すなわち、「不安」、「不満」、「不思議(未来や科学への憧憬)」と再定義、NEDOプロジェクトを紹介、過去の科学技術予測の成否を踏まえ、日本の科学技術のマクロ的全体像から、技術トレンドを示した。マクロ的全体像では、理工系のメーカー離れや基礎研究費の話題、また、2000年以降、ノーベル賞受賞数は増えるが、産業的な技術競争力は低下すると予想している。その後、ケーススタディとして、フラッシュメモリ、液晶ディスプレイ、リチウムイオン等の二次電池、移動通信、カーナビ等の市場予測、企業におけるR&D戦略などを提言した。我ながら、驚くほど、マクロ的な科学技術動向やケーススタディでの市場予測は当たっている。

当時、日本の技術や経済は世界最強、冷戦終結、また、バブル最中の社会課題は、交通渋滞、地価高騰、環境、公害、あとは癌など病気であり、これらを、エレクトロニクスを中心とした科学技術が解決するかというアプローチをとった。ケーススタディでの、フラッシュメモリ、液晶ディスプレイ、二次電池は、ノートPC、移動通信やカーナビといった、可搬性と省スペース性の軽薄短小キーデバイスであり、交通渋滞や地価高騰という「不満」に対する社会課題には、いちおう、マッチしていると言えるものだった。老いや病気、環境エネルギー問題はいわば「不安」であり、バイオやエネルギーがマッチするが、先の話題であり、また大きい問題であり、その分、切迫性が無かった。宇宙や深海、基礎研究は「不思議」であり、これも時間軸の問題である。ただ、当時、流行したAIやスパコン、その他、多くの国レベル、企業レベルのプロジェクトは、少しアンマッチな印象が多かった。

今日、当時と比べて、社会課題は、少子高齢化、自然災害、引きこもり、空き家、東西対立、国家安全保障、国際競争力低下、失業など「不安」だらけであり、「不満」はあるが我慢していると印象だ。また、「不思議」を思う余裕も減っている。デジタル列島進化論に書いたように、デジタルで、遠隔医療、自動運転、ソーシャルデジタルツイン、エネルギー、カーボンニュートラル。セキュリティ、原子力廃炉、等々、「不安」を直接的に解決してくれる科学技術はどんどん増えている。その意味では意義や意味はアッピールしやすい。