デジタル列島改造のためのアーキテクチャ設計

学生時代から、業界構造に関心がある。東芝かどこかの研究所から東大教授になった方の著書だったと思うが、電子工学の何かの本で、イントロダクションか終章かだろうが、真空管から半導体になると、信頼性が向上し、修理などが不要になる上、組立から設備投資型になると記載があり、衝撃を受けた。まさに、技術の特性が産業や企業の収益性を決めるわけで、それは、野村総研でも、心に残っており、半導体産業でのメモリとロジックの差異、TFT液晶産業離陸で、ブラウン管やSTN液晶とTFT液晶の構造を分析した背景になっている。これは、業界が垂直統合から水平分業になる際にも理解を早めた。よく言われるように、WintelPCを設計した以上に、PC業界構造を設計したのである。海外では、技術の本質を知るトップが、業界構造を設計している。この点が、日本の経営者に欠けている気がする。

 こうした考えは、MOTでも、企業産業分析予測という授業で、「業界構造設計」という項目を入れている。イノベーションが起きつつある時に、どう自社に優位に、業界構造を変えるか、どういう業界構造なら自社に優位か、を分析、M&Aや提携案も含めて、提案してもらうのである。これは、グラデュエーションペーパーでも、スマイルカーブを決めている業界構造の要因である寡占度合やQCD要求を分析、自社に優位にするための方策などに生かしてもらっている。さらに、近年は、IMECASMLが好例だが、研究コンソーシアムが、業界構造を決めている場合もあり、これもテーマになった。

 業界構造を決めるKPIは、寡占度合、垂直水平度合に加え、ネットワーク科学の知見もあるだろう。構造は業界だけでなく、この国の行く末にも重要であり、デジタル列島進化論での情報通信網や工場立地、サプライチェーン構築が鍵であり、5W1Hで、マクロ、産業、教育、経営、R&D等々、この国の構造の設計が重要である。それを意識して書いたのがデジタル列島進化論の2章や3章、68章だ。

 国も、デジタル列島改造に向け、産業アーキテクチャを、デジタル政策、具体的には、IPAを主体に、まさに、日本列島改造論のベースとなった「全総」untitled (mlit.go.jp同様の、「デジタル全総gijiyoushi.pdf (cas.go.jp)」を考えているようだ。これは凄いことだ。デジタル社会の実現に向けた重点計画本文 (cio.go.jp)

IPAでは、アーキテクチャデザインセンターがあり、日立の副社長、IT部門統括だった斎藤裕さんが、トップである。