最近の経営学の流行は大規模データからNを増やして、統計ソフトを使い、自然科学のように「厳密」に仮説検証するのが流行している。そこでは、データの意味や定義はあまり問われない。自然科学でも、測定方法や基準が重要(大学の研究室は精密測定であった)だが、対象が物理現象である場合には再現性は高い。しかし、社会科学や人文科学では相手が人間である。統計の元データは、人間によるアンケートや財務計算して作成した数字であり、間違いや誤差も多い。
今回、R&D費用について、この視点からケースとして考えたい。R&Dに関するイノベーション方程式を考案し2019年頃から学会で発表、日経新聞の経済教室でも取り上げられた。ここで使ったデータは、いずれもアナリスト時代に担当していた会社のものであり、毎年4回から10回位は会社側のCFOなどと財務数字については確認している。有価証券報告書には全体のR&D費用とセグメント別のR&D費用は開示されている。その数字が虚偽や不適切であれば、まさに不正会計であり虚偽記載で罰せられる。その意味では、R&D費用は真正なものという前提は妥当だろう。さらに途中で会計基準のIFRS移行などもあり、中身のチェックが必要であった。概ね、半分は人件費で残りは機器購入のDepや試料、外注委託費である。その意味では、選択した20社強は、規模が大きいというだけでなく、上記を詳細に毎年数回チェックしたものでる。そのデータは比較可能かつ途中の会計基準変更による継続性(ローム等)も無視できる範囲だと確認している。