イノベーションのための作法

少し前に「論理的思考とは何か」(渡邉雅子2024岩波新書)を紹介した。論理は文化により異なるため、目的に応じて、経済領域(米:逆因果律、効率性重視)、政治領域(仏:弁証法、審議を尽くす)、法技術領域(イラン:演繹、真偽)、社会領域(日:共感による推理、共感性)4パターンを使い分ける多元的思考が必要だと説いている。また、この4領域とは別に4分野があり、論理学(演繹的操作による真理の証明、形式の論理、真偽を重視)、レトリック(一般大衆の説得、蓋然的推論、日常の論理、議論の強弱を重視)、科学(物理的心理の研究、アブダクション、法則探求の論理、推論の拡張性を重視)、哲学(形而上学的真理の探究、弁証法、本質探求の論理、問の答えの本質的かを重視)としている。

4領域では、自身の経験も踏まえて言えば、米の経済領域は、株の売り買い等の投資判断には有効だが、新たなアイデアが出るわけではない。政治領域は弁証法という意味では意外にアイデアが出る場合もある。イランの法技術領域は新規性が出る余地はなく、イノベーションとは真逆だろう。日本の共感性はチームでアイデアが醸成される場合もあるだろう。4分野では、もちろん科学がイノベーションと関係するが、アダプションが重要であり、哲学の分野も関係する。

翻って、イノベーションのための論理、作法で、どれを選択するかというと、科学分野のアダプション思考はもちろんだが、4領域では意外とフランスの政治領域の弁証法と関係性がある。米の経済領域はSGには向いているかもしれないが、新技術を育み伴走するには不向きで、イノベーションの芽を摘む可能性もある。ある意味、選択と集中、投資判断の論理、MBA的リストラの論理である。

MOTの目的はイノベーター育成、イノベーション創出である。