この2月に亡くなられた野中郁次郎先生の遺著というべき「二項動態経営~共通善に向かう集団知創造」(日経2024年11月野中郁次郎、野間幹晴、川田弓子)を読んだ。99%同意できる素晴らしい本である。学生はもちろんだが、アカデミアでも理系の方は意外と認識がないようで、特に野中先生を知らない方には入口として必読書であろう。SECIモデル、野生の経営、五感をフルに、直観から等は腑におちる話だろう。逆に野中先生のファンであり、これまでの本を読まれてきた方には物足りない点があるかもしれなない。それでも、AIやシンギュラリティ、最近の日本の経営の問題点である3つの過剰(オーバー・プランニング、オーバー・アナリシス、オーバー・コンプライアンス)への指摘、人間の個別性を無視し、統計学的アプローチでの厳密性に拘り過ぎる経営学の問題点、理系やイノベーションにおけるアプローチであるアブダクション等の話題は新しいだろう。