半導体市況をどう見るか~統計は改善、稼働は低い、ウルフは破綻

半導体の市況や産業動向について相反するようなニュースが相次いでいる。SIA523日に発表した3月世界半導体販売額はy/y18.8%増の559億ドルだった。「在庫調整が一巡し、半導体販売の回復が続いている。米国では生成AI(人工知能)関連の需要も追い風になった。前年同月を上回るのは17カ月連続となった」。世界半導体販売額、17カ月連続増加 米国がけん引 - 日本経済新聞

また、DRAM価格が11カ月ぶりに上昇。指標品DDR48ギガの4月大口取引価格は前月比10%高で決着、上昇率は15カ月ぶりの大きさ。これは、サムスン、SKハイニクス、マイクロンがAI向けで需要が強く高価格のHBMへシフトするが、まだ歩留まりも低く、キャパを食うため、DDR4型の供給を減少するしかないという観測である。そうなると、DDR4生産は、中国で政府の後押しで急速に競争力を上げているCXMT、台湾の南亜科技、華邦電子に限られる。また、トランプ政権による追加関税を見越した前倒し購入もあるようだ。DRAM価格、11カ月ぶり上昇 大手が生産縮小の観測も - 日本経済新聞

これに対し520日の日経報道では、国内半導体新設工場の過半が稼働せずという。「2023年度以降に竣工した国内7棟のうち4月末時点で4棟が量産段階に至っていない。AI向け除く半導体の市況回復に時間がかかっている。政府支援による半導体投資に関わらず24年はシェアが2年ぶりに低下、成果に結びついていない」という。日本の半導体新設7工場、過半が稼働せず AI向け先端品つくれず - 日本経済新聞

やや気が早く、稼働はこれからだろうが、AIは好調、非AIは不況であり、足元は、米中摩擦や関税を意識して、早目の書き込み調達が大きい。関税が一段落すれば、反動減もある。

更に米WSJ21日パワー半導体のウルフスピード社が「チャプター11(日本の民事再生法)適用申請に向け準備と報じた。米半導体ウルフスピード破綻と米報道 株価6割安、ルネサス取引先 - 日本経済新聞   

 

ウルフスピードは、旧クリー、パワー半導体の老舗であり、SiCのウエハー、デバイス、GaN等もある。SiCでは、昇華法を手掛けており、ルネサスが10年間の供給契約を結んでいた。また、CHIPS法により、最大7.5億ドルの助成などが得られ、22年は、EVブームで米南部ノースカロライナ州で世界最大級のSiC製の半導体工場建設を発表、23年には独でも次世代パワー半導体新工場と研究開発施設を新設と発表していた。バイデン米政権、半導体関連の米ウルフスピードにCHIPSプラス法で7.5億ドルの助成発表(米国) | ビジネス短信 ジェトロの海外ニュース - ジェトロ