2016年の電機精密業界は、2020年にむけ、新しい主役、新しい体制・ルールを模索する年になろう。そういう意味では、2015年は、既に、その兆候やヒントが出てきた。
技術では、ハプティック、OLEDおよび400ppiRGB、シリコン発振、ヒューマンロボ、AI、IOTや5G、ADASなどの新しい主役が登場した。ハプティックは、GUIと同様のインパクトが大きい技術であり、OLEDは20年に及ぶ液晶の代替、シリコン発振は水晶を駆逐、ロボットやカーナビ技術はあったが、AIとユーザーインターフェイスの向上でフェーズが変わってきた。
企業では、国内では同業種で二極化どころか格差が拡大し、産エレでは日立と東芝、民エレでは復活したソニーとシャープが対照的であり、部品では村田の優位が際立った。まさに主役は新星ではなく老舗の大手であり死角もないと思われている。ここ数年、新しく主役を演じた三菱電、オムロン、エプソンは下方修正で足踏み。精密や電子部品、製造装置の多くは堅調だがそれほどの勢いはない。また中堅以下のメーカーでは苦戦が目立つ。グローバルに目を転ずると、ファーウェイ、紫光など中国の新しい主役が登場してきており、ここ10年、主役を演じた韓国のサムスン、台湾のTSMCや鴻海は、話題は多いが勢いはかつてほどではない。
業界構造あるいは体制では、半導体、通信、製造装置で、再編が多く、3極化が進んだ。半導体では、TSMC、サムスン、インテルの3強であり、MU、ハイニクスはやや脱落だ。液晶では、中小型でこそJDIがトップ3に入っているが、TV向け大型も含めた全体では、サムスン、LG、BOEだろう。装置では、AMAT、TEL、KLA-Lamに集約されつつある。通信NWでも、シスコ-エリクソン、ノキア-アルカテル-ルーセント、ファーウェイの3極、端末系では、スマホでも、アップル、サムスン、ファーウェイに集約されつつある。MEでも、GE、シーメンス、フィリップスである。
業界再編も、国境や業界を越え、ますます電子部品と機械部品、電子部品と半導体の垣根は崩れている。キーワードはモジュール化だが、村田やTDKによる半導体メーカー等の買収や、ミネビアとミツミの統合は象徴的である。また、かつてのファブレス・ファンダリかIDMかという分類や、ブランドかEMSか、あるいはメーカーか否かさえも無意味となりつつある。
ガバナンスコードの導入や会計でのIFRS導入も、役員体制の在り方、企業経営のあり方、経営戦略、競争ルールを変え、業界や企業を変えていこう。特に、ポートフォリオや事業ドメインの再定義につながっていこう。
経営では、執行役員と役員の役割分担が進み、役員は社外役員というより監督役員とでもいうべき存在となる。これまでは社長は会社の中で絶対的な存在であったが、後継者を決めるのは指名委員会、重要な方針を決めるのは諸処の委員会となり、また株主の権利が重視されると、ますます、社長の権限は少なくなる。
その中で、社長の更迭、社長と他の役員や株主との対立が目立つが、そういう流れの中で、社長の権限や機能、役割などの定義が曖昧、認識が一致してないからであろう。同じ社長といっても、オーナー系か否か、委員会や監査役などの体制や仕組みで大きく異なるわけであり、制度面での優劣も競われることになる。
IFRS導入では、より時価評価が重要になり、P/LよりもB/SやC/Fが重視される。また、東芝不正会計事件もあり、もはや営業利益は誤魔化し特損で帳尻を合わせるとか、在庫で加減したりすることも厳しい。これが、企業間格差をより大きくしている背景であり、格差拡大というよりは、より実態の真実の差が明らかになったといえよう。