カテゴリ:2016年1~3月



31日 3月 2016
恒例の経営説明会が、3月31日 18時50分~19時40分まで開催、マスコミと投資家・アナリストは別。説明は津賀社長、質疑は津賀氏がメインで河合CFOが補足。  プレゼンは簡明。2015年の反省で、環境対応力、増販が課題、他方、経営体質はつき、M&Aの布石も打てたとの自己評価。...
31日 3月 2016
東芝が、ライフスタイル社の株式80%を美的集団に売却、正式発表した。譲渡日は6月末。のこり20%は、8年経過以降に行使可能なプットオプション。...
31日 3月 2016
シャープ、鴻海が30日夕方、正式に合意を発表、適時開示もされた。ほぼ、先日の日経報道などに沿った内容であり、出資金額1000億円の減額(株価118円⇒88円)、払い込み期限は10月5日、メインバンクは3月末の5100億円返済期限を1か月延期。なお、1000億円の補償金はやや不明な点がある。...
29日 3月 2016
日経報道によると、シャープの今期の業績は、OPが従来予想100億円の黒字から赤字900億円、最終損益は非開示から2000億円の赤字になる模様。報道によると、偶発債務の一部以外にも在庫評価損の処理を求めている模様。1-3月のTV奨励金も引き当てるようだ。シャープ側も、下方修正を検討していることを開示した。...
23日 3月 2016
シャープの再建策が、2月25日の取締役会で鴻海案を採用、そのまま収束と思われたが、その後、2月24日朝にシャープ側から最大3500億円の偶発債務の可能性が示唆され、鴻海は決議を延期、その後、やはり鴻海が決断したとの報道もあったが、諸条件を巡って、延び延びになり、条件引き下げ要求や、決裂説、さらにはINCJ案でよかった、などの意見まで出ている。そこで、少し整理したい。なお、偶発債務その他についてシャープ側から一切開示はなく、妥結に向け努力しているとだけだ。 2月24日 シャープ側から鴻海(及びINCJ?)に最大3500億円偶発債務通告 2月24日 鴻海は精査のため締結延期 2月25日 シャープの取締役会で鴻海案を選択、第三者割当増資の計画など開示 2月26日 シャープ高橋社長、鴻海へ、偶発債務の説明 2月26日 報道によると、1-2週間延期 2月27日 INCJ撤退表明 2月27日 報道によると、3月7日締結目指す 2月29日 シャープ側の交渉責任者が藤本氏 3月3日 報道によると、偶発債務は300億円以下、or 500億円以下 3月3-5日鴻海100人がシャープ訪問で追加DD、テリーゴー氏も八尾へ  3月5日 報道によると、高橋社長辞意 3月6日 報道によると、精査終わり近く合意 3月8日 台湾報道によると、シャープ派遣の人事の噂 3月8日 報道によると、鴻海は銀行に追加支援要求 3月9日 報道によると、3月7日目標が、来週ずれこみ 3月14日 報道によると、明日にも正式契約 3月15日 報道によると、主力二行と協議、減額や金利下げ、偶発債務が顕在化した場合の融資 3月16日 報道によると、買収延期、業績見極め 3月16日 台湾報道によると、高橋社長が鴻海訪問、詰め一段落、テリーゴーが見送り 3月16日 台湾報道によると、テリーゴー個人でシャープ株を買うため融資260億円 3月16日 JDIリストラ発表 3月19日 報道によると、鴻海が減額要求 3月21日 報道によると、月内決着を目指す 3月22日 報道によると1000億円、最大2000億円減額の要求、週内役員会で可否 3月22日 台湾報道によると4月末の可能性  上記で、下線部は事実に基づく報道だが、あとは、リークや憶測が多い。言えることは、シャープ側と鴻海側が、協議を続け、合意に向け努力はしており、テリーゴー氏あるいは鴻海側の意欲もあるようだ。しかし、期限や話し合いがどこまでついたかは不明である。また、明らかに偶発債務事件以降、こじれており、長引いている。台湾側の報道は、鴻海傘下の前提だが、日本は、楽観論と悲観論が交錯、後者では、鴻海撤退、INCJ期待あるいは破綻説まである。偶発債務は大きな話ではないのに、鴻海は、それを交渉に利用しているとの見方もあるが、テリーゴー氏が実際に激怒したとの伝聞や報道映像の表情から芝居ではないと思う。 鍵は偶発債務の中身と金額 現時点では、3500億円の中身が不明であり、300億円、500億円との説もあるがよくわからない。そもそも、有報での開示は約1000億円であり、大半は堺のユーテリティと、ポリシリコンの残りの評価損であり、それ以外にも2500億円という巨額な金額が残る。政府補助金との説もあり、検証したが、大きなものは亀山などの補助金であり、累計でも、2-300億円程度。マイナス金利によるPBO悪化や株安であれば、最大1500億円は考えられ、あとは、以前から指摘している販売チャネル先の補償金であれば数百億円から1000億円の可能性はあろう。特許も十分可能性はあるが判断は難しい。一番嫌な可能性は粉飾であり、これは推定のしようがない。東芝も最初、社内調査での500億円規模がOPで2000億円以上、B/Sへのインパクトは結局5000億円規模となった。粉飾と言えないので、偶発債務という表現の可能性もあろう。そうであれば、時間をかけ詰めているのも理解できる。 条件交渉は銀行が鍵 現在、出ている話は以下であり、偶発債務の内容や顕在化リスクについての議論である。 出資額を引き下げ(1000億円が最大2000億円 4890億円が3890億円か2890億円へ)、鴻海が6割強持つスキームは不変ゆえ買取価格118円が引き下げ→週内役員会で決議 銀行に債権放棄(全額から1000億円更に500億円?)→合意? 偶発債務が顕在化した時の融資等→不明 3月末期限の5100億円借り換えあるいは猶予延期→合意 5100億円返済後の金利引き下げ→難航? 鴻海側としては、できれば決算を絞めて、それを見て、安心したいところだろう。3月末に5100億円の返済期限がくるが、これは、鴻海案をのむ以上は融資や延期なので、問題がないが、鴻海案を蹴る場合は、破綻しかない。最も難航しているのが金利のようだ。 鴻海は、そもそもシャープに本気でなかったのか  また、一部に、そもそも鴻海は、それほどシャープを買う気もなく、INCJ案を潰したいだけだったとか提示した金額も見せかけだけとの説もあるが、以下から、そうではないだろう。 2012年の時から一貫している、もともと、筆頭株主を希望したが、周囲、銀行などから止められた。当時も事実関係からすればシャープが悪い面も多い(「シャープ崩壊」(日経)、「日本のM&A」(服部))。また、実際、堺には出資している。 今回も忙しいのに何度もシャープ本社訪問、シャープ側も鴻海へ訪問。また経産省にも行っている(少し前の東洋経済の特集)。コストをかけ、DDもし、シャープの増資の中OLED等資料も鴻海の日本が作ったという。 最初の会見では、取材陣に合意?文書を笑顔で見せた。しかし、偶発債務が発覚した後は、本当に激怒したというし、映像の表情も全く異なっていた。 台湾でも、既に鴻海支援の方向でニュースが出たりしている。 偶発債務が出た後も、八尾の工場に大挙してきて会合している。人事も進んでいる。 今回の7000億円という金額も中身でいえば、2000億円は、OLED対応など半分以上は、シャープ買収がなくともイノラックスで必要な投資だ。ムダといえるのが、3500億円債権の買取の分だけである。 合意直前の2月25日に、「はじめて聞く」という最大3500億円のかなりの項目の偶発債務の可能性を聞けば、最初からやる気がなければ、すぐ降りるか、目的がINCJ案潰し(JDIのシャープ統合を阻止がイノラックスのためになるという)であれば、INCJ撤退表明の後で、同様に降りれば済むことだ。それを銀行とも交渉、100人のチームでシャープ工場を訪問しDDするなどは、そういうマイナスやリスクを考慮しても、シャープを欲しいのであろう。それは、短期でのOLED対応やアップル向けシナジーだけでなく、中長期の鴻海のEMSでの多角化、ブランド事業への展開を考えてのことであろう。 偶発債務が明らかになった以上、内容にもよるが、偶発債務の期待値(∑各偶発債務要素×確率)の分だけ、鴻海が金額を下げるのは当然だ。その個々の要素の確率を巡り、議論がなされているのだろう。収集が付かない場合は、決算を見てから、となるのは当然だ。それを解決する仕方として、金額の引き下げなのか、金利なのかを、詰めているのだろう。あまり金額を下げると、買取価格が下がりすぎて、有利発行となる可能性があるし、それも含め3月末のB/Sや株価を見極めたい、ということだろう。このままでは、債務超過となっている可能性が高く、倒産はしないにしろ、いろいろ企業活動には支障が出るだろう。銀行もメインバンクとしての責任から、妥協すべきところは妥協すべきだろう。
22日 3月 2016
電機業界の再編やM&A、とりわけ、水平分業の代表、EMS最大手である鴻海による、いわば垂直統合の負け組シャープ買収の件を契機に、垂直統合と水平分業に関する議論が沸き起こっている。...
19日 3月 2016
先日、CKDの工場見学の機会があったので報告する。今年に入ってからだが、やや時間が経っているが大きくは変わらないだろう。訪問したのは、四日市工場の後、自動機の本社の展示ライン。セルサイド時代、CCFL製造装置が好調だった頃に見て以来。併せて3Q決算動向も分析する。 小牧工場概要...
19日 3月 2016
先日、CKDの工場見学の機会があったので報告する。今年に入ってからではあるが、やや時間が経っているが、大きくは変わらないだろう。訪問したのは、コンポーネント関係の四日市工場と自動機の本社のライン。四日市工場は初めてだが、本社の自動機ラインはセルサイド時代、CCFL製造装置が好調だった頃に見た。 四日市工場概要...
19日 3月 2016
3月18日16時半~18時、マスコミ合同の説明会だった。出席者は室町社長以下、志賀氏(電力等)、成毛氏(セミコン等)、綱川氏(ヘルスケア、ライフスタイル等)、平田CFOと、フルメンバー、主要事業を統括するトップが一堂に会したのは珍しく、執行陣のチーム一丸の意気込みを感じた。東芝は良くも悪くも遠心力が強い社風だが、危機感で求心力が高まっている印象。さすがに今回はレベルが低い答えようの無い質問は減り、マスコミも含め、あるべき東芝の姿を見出そうとしていた。  今回のポイントは、①メディカルや白物家電の売却のB/S改善など効果や、他の事業売却の可能性など、②第三の柱をどうするか、成長エンジンは何か、中期のポートフォリオ、③業績目標の考え方、④SEC調査等リスク、⑤経営陣の有り方、などだろう。 ロードマップ  プレゼンの最初に新生東芝へのロードマップが示され、2015年度は、とにかく企業としての存続のため、虎の子のTMSC売却だったが、16年度は資本市場への復帰、最低限のB/S改善、特設注意銘柄解除が大きな課題である。2018年度は収益基盤の確立、20年度が永続的発展、と示された。  なお、米SEC調査の件は、一部報道がある米原子力関連の子会社のことではなく、昨年の第三者委員会の英訳を元に調査が開始された全社に関わる話であり、まだ、最初の段階らしい。ただ、私見だが、他のアナリストの指摘にもあったが、WECは未上場であり、また東芝もSEC基準とはいえ、ADRにも上場しておらず、仮に問題があったとしても、処分の仕方が難しい。また、そもそも、WECは、アーネストヤングの指摘で減損をしている。また、富士フイルムの質問状の件は、キヤノンの提案であり、双方の弁護士が確認したものであったことが判明した。 チーム室町 室町社長の去就についての質問もあったが、これまでとややニュアンスが異なり、指名委員会が判断すべきことだ、と発言された。心労は大きい上、ご性格からすれば、危機を乗り切れば、成長戦略、新しい東芝の姿を描くことは、後進に委ねたいというところだろうが、2015年度末を乗り切っても、SEC調査や旧経営陣や株主訴訟の裁判はもちろん、特設注意銘柄解除の責務もある。また、TMSCの行く末を見据え、白物家電やPCの案件を終了させ、ジャパンセミコンダクタなど半導体の業界も含めた再編などを見届けるまでは、続投は仕方がないかもしれない。 東芝-キヤノンの友情と、シャープ-鴻海-INCJの三角関係横恋慕 後任候補の方も、そういう膿やケリがつくまでは引き受けたがらないだろうし、委ねるわけにもいかない。病気との報道もある西室氏のこともあり、今は、室町氏をはじめとする陣営でチーム一丸となるしかないだろう。むしろ、危機を共有する中で事業部門を超えた求心力がついているようにも感じた。また、東芝の再生には、過去の土光さん等、外部からの大物経営者の参画が不可欠で、理想は、GEなど外資が出資と同時に会長あたりに就任、というのが不可欠ではないか指摘してきたが、もしかしたら、キヤノンの御手洗氏がキヤノンCEO退任後なら、ありうるかもしれないし、適任かもしれない。 今回のTMSC買収は、シナジーを考え、キヤノンの医療多角化には当然のバリエーションだろうが、今回のスキームの提案や昨日中に全額を振り込むなどの行為には、経団連で一緒でもあり、SEDなどで連携した、東芝への長年の友情、愛着、敬意も感じられる。そこは、それぞれのレベルは違うが当初のテリゴーのシャープへの「慕情」と似ている。もし当初通り7000億円程度であれば、奇しくも額まで同じだ。フェアにオークション方式で決め、その後はお互いの信頼の元に期限に即金で払うというキヤノン-東芝のケースと、シャープ、鴻海、INCJと、それぞれがリーク合戦で不透明な駆け引きで、延期で、まだ収束していないのと、大きな違いである。そこは、御手洗氏を見直したし、東芝も良かった。 それゆえ、富士フイルムが質問状を出しているのは当たらないし、キヤノンが東芝の窮状を見て、そういうスキームを提案したということだろう。その意味でも、キヤノンで良かっただろう。これが2015年度決算にどう織り込まれるかは未定であるが、キャッシュはあるということであり、最大の危機は脱した。実態は1兆円には届かないが、7000億円弱の自己資本はあるだろう。 白物家電のマジョリティは美的集団、PCはあと一歩、今回の事業売却は取りあえず終わりか 家電事業に関しては、東芝ライフスタイル㈱を過半の株を美的集団に譲渡するが、最終合意は3月末でディールが終わるのは3ヶ月後のようだ。数百億円とされる売却金額はNA。一定の株式は保有し、東芝ブランドも継続する。なお、東芝ストアを含む販売網は継続、「サザエさん」も含めた全社のブランドは重視する。この他、映像は国内中心に継続のようだ。PCについては、方向性は一致だが、条件協議で2016年度1Q決算までに決めたいようだ。INCJとの絡みに関する質問は出なかったが、これは、マスコミも含め、シャープに絡んだ後付けの話だと見ているようだ。  これまでは、メディカル、白物家電だけでなく、半導体の非メモリ、HDD、TV・映像、東芝テック等の子会社も、売却検討の可能性があるような印象だったが、喫緊の事業売却は一段落か。質疑には同意はしてなかったが、TMSCが高く売れたこともあり、もともと売却金額は大きくないとは言え、もはや、これらの事業を焦って安売りする必要がなくなったのだろう。もし、あるとしても、今後は成長への連携や、資本増強など、それぞれの事業のため、あるいは全社成長のためのポートフォリオ入替であり目的が違う。なお、コアのNAND事業の分社上場の検討については、継続との発言はあった。 リストラは1.4万人  リストラは1.4万人で、3000人はグループ内で再配置、また、TMSCの1万人は別枠。このため、連結人員は2014年度末の21.7万人から2016年度末には16万人まで減る。 これについては、むしろ過去を検証したい。ITバブル直後のリストラで、似たような数字であるが。1.7万人をリストラ、20万人を16万人まで減らすとしていた。ちょうど、当時は、売上も6兆円から4.7兆円であり、半導体やPCやTVなどで固定費を減らしたが、その後、知らない間に、なぜ人員も固定費も、また膨らんでしまったのか、現場が自然に増えるのか、その検証をしないと、「減量・ドカ喰い」ではないが、同じ悲劇の繰り返しであろう。また、今回のリストラ案で、新卒採用中止の件は褒められない。少しでも入りたい学生は採用すべきで、そこに光る人材もいるだろう。 2016年度OP1200億円、18年度2700億円は第3者のチェックを反映  今回の説明会では、2016年度、2018年度の業績目標も示された。本来なら、3か年中計だが、いつものように派手なものではなく、冷静で、かつ、第三者の意見も反映した慎重なもののようだ。  2016年度は、計画として、売上4.9兆円、OP1200億円、NP400億円、FCF400億円、なお、設備投資3700億円、研究開発3100億円は、メモリと原子力に集中。2018年度は暫定目標として、売上5.5兆円、OP2700億円、NP1000億円。業績改善はNAND中心に売価ダウン等は大きいが固定費改善2400億円などが大きく寄与。 B/Sでは、2016年度末にTMSC売却、NP400億円を含め株主資本6860億円、ネット有利子負債が7650億円と現状から半減するとした。現在の自己資本1500億円、売却益6000億円弱、から見て、PBO悪化などは織り込んでいるようだ。  なお、暖簾は、原子力では前回3852→3513億円、LG社1713→1563億円は、為替変更によるもの、減損テストは、3Qでは問題なかったが、4Qで年次のテストを実施中。 今回、セグメントは変更され、TMSCや白物家電の売却、PCも切り出しで、カンパニーは7社から4社となり、主としてエネルギー(従来の電力と送変電)、社会インフラ(従来の電力社会の一部とコミソリ)、ストレージ(従来のセミコン&ストレージ)となる。新セグメント別には、エネルギーが売上1.71兆円、OP520億円、うち原子力の売上8700億円、OP400億円、社会インフラは売上1.33兆円、OP510億円、ストレージは売上1.43兆円、OP320億円、とされた。 原発は、前回から売上、OPも上方修正されたが、12月末に買収したCB&Iストーンアンドウェブスター社(現、WECテック)買収を反映したものであり、基本は見通し不変である。なお、減損テストの前提は厳しめに原発受注は64基ではなく45基。 セミコン市況はかなり厳しめに見ており、4-6月はトントン位ではないか。ただ、非メモリはリストラで赤字にはならないようだ。夏以降に需給バランスで改善、下期回復の前提。またSSDとHDDのビットクロスは2025年だが、一部ハイエンドの1.5万rpmでは既に始まっているようだ。 なお、非メモリは、DBJ主導で再編など売却報道もあったが、今回、SOCでは、ジャパンセミコン社を設立、アナログファンダリとして成長させる。当初は東芝100%だが、再編の中で他の資本も受け入れる可能性を示唆した。ディスクリートは、白色LED撤退、加賀でパワー、クルマ向け中心。 第三の柱はI作戦の再来 今回、最も注目したのが、セグメント変更であり、第三の柱として社会インフラを掲げ、横串の組織として、インダストリアルICTソリューション社を位置付けたことだ。あたかも、80年代に戻って、「I作戦」の再来、「情制本」復活を再起させる。当時の東芝はメモリも弱く、重電中心の会社だが、高度情報化社会の到来の中で、制御コンピュータで強化し成長エンジンとしようとしたものだった。結果的には、ビッグデータもAIもまだであり、本来の狙いは開花せず、むしろ派生的に、ノートPCや、DRAMが大成功、90年代は、その貢献が大きく、逆に、その後は、これらの事業の不振に苦しんだ。 組織の狙いは明確で、日立と同様にIT部門を横串で、応用市場に向けITとの掛け算でシナジーも出していこうとするものだろう。日立では「マル情」が、物流、金融と共に横串にもなり、縦にもあるが、東芝では、インダストリアルICTソリューション社、セミコン&ストレージも、そういう位置づけになろう。日立では、プロダクツ系が子会社で残っているが、東芝ではここはカーブアウトされた。 比較すると、社会インフラの応用市場は、日立の方が幅広く、海外展開も進み、横串も強い。東芝の課題は、応用市場が狭く、社会インフラは国内中心であり、横串に金融や物流がないこと、そもそも、カンパニー制ゆえに遠心力が強く、各事業がお互いに干渉はしないが、無関心であり、業績は競い合うという傾向があったのをどう連携させるか、である。
18日 3月 2016
セイコーエプソン(以下、エプソン)の中計説明会に参加した。17日15-16時、説明者は碓井社長、質疑は、濱専務、井上常務、IR花岡氏。やや質疑の時間が短く、もう少しジックリ聞きたかった。もっと注目されるかと思ったが、参加者もそれほど多くなかった。日頃、IRは充実しており、決算説明会の他、事業説明会、スモールなどかなりイベントは多く、碓井社長の登場回数も多く熱心である。あえていえば、工場見学会、R&Dの説明会がなく、期待したい。  大学が精密機械専攻だったこともあり、前身の一部、信州精機の頃からリクルートで訪問したことがある。NRI時代、80年代後半からは、液晶や半導体の調査で各拠点を訪問した。2003年が上場だが、みずほ証券が副幹事だったこともあり、直接の担当ではなかったが、チームでフォローした。2005年以降は、ファンドの立場として、引き続きウォッチした。累計訪問は、上場前の液晶産業調査も含め、INPUTは200以上と、精密業界では、ニコンに次ぐだろう。過去1年も説明会には参加したが、若様ブログでは、なかなか取り上げられず、今回が初めてである。 遅すぎた上場、エプソンこそ液晶技術でトップだったが  現在の事業領域は、事務機が中心となり、デバイスもかなり縮小されたが、かつては、エプソンこそ、「液晶技術のエプソン」であり、産業への貢献は極めて大きいだろう。また、半導体では、MPUもコンパチ戦略であったが実績があり、デバイスからセットまで広範な事業領域を誇り、総合電機と肩を並べ、総合家電以上の技術力があっただろう。それゆえ、2003年の上場は、「遅すぎた上場」と言われ、もし、セイコーのグループ戦略が違って、80年代に上場したら、液晶ではトップを維持できただろうし、半導体でも成長できただろう。株式市場でも、ソニー以上に、外国人投資家も含め評価された存在になったのではないか。液晶では、アクティブマトリックス化で、TFTでななく、MIMを選択して苦戦したが、もし上場して豊富な資金があれば、また異なった戦略、選択をとっていたかもしれないだろう。 逆にいえば、現在の事業領域より遙かに広範な技術力はあり、経営面も、京都に有力企業が多いのと同様、長野県らしい独特の風土、モノ作りへの拘りがあり、潜在力は大きいだろう。それゆえ、リストラで現在の事業領域に絞り込んだことはいいが、デバイスの現状は、かつてを知っている者としては寂しく、いずれ違う形で花咲くことを期待したい。現在は、事務機、せいぜい、プロジェクタ位しか、株式市場や投資家アナリストの関心はないようだが、そんなものではないはずだ。 ビッグタンクの成功はケーススタディの好例  そういうデバイス事業への想いが強かったがゆえに、事務機へのフォーカスが残念だったことに加え。上場直後こそITバブル後の回復過程で、増収増益が続き、2004年度は過去最高の売上1.48兆円、OP910億円、NP557億円を達成したが、その後は、減収減益、リストラもあり2期連続の最終赤字だったため、肯定的に見られなかった。また、多くの精密メーカーが円安もあり最高益を更新した2007年度も、売上1.3兆円、OP576億円、NP191億円にとどまり、リーマンショックの2008年度はOP赤字、最終赤字1113億円と厳しいものだった。その後も、2009年度、2012年度は最終赤字、OPも200-300億円台で低迷したため、いい印象がなかった。それゆえ、碓井社長が、ビッグタンクモデルと共に登場して、2012年のSE15後期中計や、スモールミーティングで説明を聞いても、東大工学部卒の技術屋で尖がった経営者であることは分かったが、それが当時評判を落としたシャープ片山氏と印象がだぶり、肯定的な見方ができなかった。それは、当時の株式市場でのコンセンサスでもあっただろう。 しかし、その後は、ビッグタンクでの快進撃、上方修正が続き、2013年度は純利益は最高、OPはピーク更新にやや及ばなかったものの、2014年度はOP1314億円、NP1126億円と大きく更新した。後講釈だが、ビッグタンクは、この自社の技術の強みを生かし、市場動向を見据えた経営戦略の成功例として、ケーススタディとなるほどのものであった。自分の眼力の無さ、過去数年の業績で判断してしまう偏見を反省し、熱心にビッグタンク戦略を説明頂いた碓井社長やIRにも失礼であったと思う。今や、碓井氏は、最も注目される名経営者の一人であろう。 注目すべき中計  そういう意味でも、これまでの自身の反省も踏まえ、碓井氏の現在の名声や、ここ数年の成功にも囚われず虚心坦懐に、No Sideで、中計を考察したい。  まず、前回2012年の策定のSE(SEIKO EPSON)15は、2014年度に売上1兆円、OP700億円だったが、はるかに上回る業績であり、垂直統合型のバリューチェーンを築いた。ただ、やりきれなかった新事業もあった。今回のEpson25、2025年までの中計では、中長期の世の中のトレンドを見据え、同社の「省・小・精」「驚きと感動」というミッションの中で重視すべき価値は「スマート化」「環境」だとして、リアル空間に価値をおき、サイバー空間、IT業界から注目・連携される会社を目指すようだ。今回、中計がSE25とか、ではなくEpson25となった点について資本構成の変化があるのではという鋭い質問があったが、そうではなく、セイコーグループに属し、社名も不変だが、エプソンのブランド価値向上に重きを置いているためだとした。 業績目標は、2018年度の売上1.2兆円、事業利益960億円、ROE10%、2025年度は、売上1.7兆円、事業利益2000億円、ROE15%とした。Epson25第1期中計の2018年まではSE15でやり残された課題をやり切り、成長基盤を創り上げる。配当性向は中期で40%、機動的な自社株買いなど株主重視へ。

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