2016年3月31日 東芝、白物家電を美的集団に売却へ

 

東芝が、ライフスタイル社の株式80%を美的集団に売却、正式発表した。譲渡日は6月末。のこり20%は、8年経過以降に行使可能なプットオプション。

 

ライフスタイル社は、売上4989億円、OP赤字821億円だが、この数字は、売却されない映像事業の売上1917億円、OP赤字321億円を含んでいるので、売却される中身の実態は、売上3000億円、OP赤字500億円くらいである。なお、ライフスタイル社の単独B/Sは、前期末で、総資産950億円、純資産マイナス654億円(債務超過)。売却されない映像部門は、東芝メディア機器に会社分割で譲渡される。

 

このディールにより、東芝は、2006年度1Qに利益計上900億円だが、負債も含めると537億円となる。先日の経営説明会では、具体的な数字の明言はなかったが、数百億円で、それほど大きな金額ではないというニュアンスだったため、ややサプライズである。美的集団は、東芝の白物のブランドを40年使用、5000件以上の特許の知財をフェアに評価したものだろう。

白物家電は20兆円市場だがローカル色強く買換えも長く垂直統合モデル

 

白物家電は世界市場20兆円と推定され、既に中国でも都市部では普及率は100%近いが、農村部では、70%以下であり、更に新興国では、コスト次第で成長余地がある。先進国でも、IOTを入れたスマート家電、健康家電など成長余地は大きい。広義ではロボットともいえ、多様な展開を秘め分野である。

 

この業界も、規模が重要ではあり、ハイアールがGEの家電部門を買収するなど、世界トップ3の座を巡って、合従連衡が相次いでいる。ただ、PCやスマホと異なり、地域により、規制や風土・習慣が異なるため、ローカル色も強い上、キーデバイスのモーターやコンプレッサなどの信頼性が重要である。高価であり、信頼性が重要であるため、買換えサイクルも、10年以上と長く、ローカル毎に市場が異なるので、1億台を大きく超えない。このため、経営重心®では、ジャパンストライクゾーンのやや上に位置する。それゆえ、水平分業モデルよりは垂直統合モデルが多く、EMSもあまり聞かない。

 


東芝の家電事業総括

 

東芝は、まだTV事業は国内中心に残っているが、今回の白物家電売却で、長い歴史は一段落する。特に白物家電は、垂直統合モデルで行ける上、モーター、センサー、更に制御、AIという意味では、ロボットへの展開もあり、そう大きな赤字でもなく、不正会計も無かっただけに、残念である。

 

 過去30年の東芝の家電部門(TVと白物家電)の業績推移を示す。何度か、セグメント変更があり、継続性がない。特にエアコンが、以前は、採算のよい業務用も入っていたが、最近は、コミニティソリューション部門に入った。80年代後半までは良かったが、バブル崩壊以降、急激に売上低下、赤字が続いた。2000年以降、デジタル家電の成長にのって、標準化などでも、業界をリードしたこともあり、黒字となり、TVも健闘したが、再び悪化、ここ数年は赤字が拡大した。

 

 

 86年度以降では、過去最高は90年度の売上1.5兆円、OP400億円。97年度に累積赤字転落、98年度に累積赤字500億円超え、2002年度に再び累積黒字となったが、再び悪化、2012年度は累積赤字1000億円を超え、危険水域となった。創業来の赤字はもっと大きいだろう。日本人だけでなく世界の人に、快適で楽しい生活を与え、暮らしを向上してくれた東芝の家電事業は、その実、苦難の歴史でもあった。