2016年1月21日 日立、社会インフラ「ファンド」としての魅力と課題

 

日立の株価が業績好調の割に冴えない。12月に、社長が、一部のセルサイドアナリスト向けスモールミーティングや、記者向けにアッピールしているがあまり効果はなかったようだ。

 

報道やセルサイド情報によると、2018年度までの中計では、サービス比率を2015年度の40%から50%に高め、これまでの営業利益率7%10%以上、エネルギー、鉄道、ヘルスケアのM&Aに意欲を示し、GEがベンチマークのようだ。また、ここ数年は、電力自由化やマイナンバーの特需もあり堅調そうだ。

 

米利上げによるグローバルな新興国リスクや石油価格下落の影響を織り込んでいるのか、会社側も認めているように、コングロマリットゆえの分かり難さ、なのかは不明だ。

 

株価低迷の理由は様々だろうが、最大の要因は、日立が本質的に、社会インフラ「ファンド」の側面をも持つと思うのだが、まだそういう理解がされていない、ということだろう。だとすると、そういう説明をする方が、より投資家には分かり易いだろう。つまり、日立は、いわば、「中西CEOが中心のファンドマネージャからなる、社会インフラファンド」、かつては、あれもこれもやっていたし、透明性やガバナンスもダメ、投資哲学もなく、庄山「ファンドマネージャ」は、ポートフォリオをうまく設計できず、市場の英知を超えられなかった。しかし、「中西ファンドマネージャは、世界の英知にアドバイスを貰いながら、投資哲学が明確であり、市場のファンドマネージャをアウトパフォームできる」というような説明をすべきだろう。実際、経営重心理論では、電機セクターでは、日立、東芝が5以上であり、三菱電は4、また傘下に日本無線、新日本無線を持つ日清紡グループも5以上ある。経営重心の事業面積が5以上は、ポートフォリオが重要になる結果、ファンド的になり、ホールディングス体制であるべきで、故に、透明性、ガバナンスが重要で、委員会設置会社であるのは適切であろう。

 

 日立を社会インフラ「ファンド」だとみた場合に、本当のファンド会社が社会インフラ関連企業でポートフォリオを組むのと、どっちがアウトパフォームするか、を考察すると、日立のプラスは、①実際に事業をしているので事業が改善向上する、②実際に事業をしているがゆえに、目利きが優れている、③グローバルに一流の経営者などを社外役員にしてポートフォリオを組んでいる、④事業間のシナジー、オープンイノベーションによる効果、研究所の貢献、などである。マイナス面は、①環境変化に応じて、瞬時にポートフォリオを変えられない、②日立自身の事業もあるので、そこは入れ替えが効かない(仮に、ITでは、IBMがいいからといって情報部門を売りIBMを買うわけにはいかない)ポートフォリオ管理に最新の理論を入れているか、などであろう。

 

 ここで強調すべきは、事業間シナジーなどであるが、そこの説明はないようで、突っ込んだ質疑もなかったようだ。

 

会社側がどこまで意識しているか不明だが、物流、金融、商事機能が重要であり、そこが、ITでは、IBMなど比べた強みだろう。よくGEが金融から撤退しモノ作りに集中するというが、リースなど製造業に関連するところは保有したままであり、そこが強さの原点でもある。既にスマトラ活動で強化はされているが、こうした横串機能があればこその面も多い。