2016年2月15日 鴻海の狙い?シャープとのシナジーは?

 

25日の鴻海テリーゴー氏の電撃的なシャープ本社訪問、シャープも鴻海案を優先、最終締切り2月末との報道の後、鴻海は株主比率51%に拘らない、ソフトバンクに出資要請、などのニュースが五月雨式に出ている。シャープ決算での社長発言、NHKや日経報道から大勢は決まったようだったが、INCJ側も諦めたような話がある一方でと金額引上げ一部役員の排除でシャープもINCJ再検討、シャープに雇用確約請求など報道もあり、なお、リークが燻っている。215日までは台湾も旧正月であり、新たな動きというよりは、既に出ていた話が時差で、リーク思惑も含め出ているような気がする。

 

 そこで、再度、最終的に決まる前に、議論をしておきたい。前回は、ステークホルダーの視点から鴻海案とINCJ案を比較分析、シャープの業績不振の分析、鴻海の経営の特徴と業績動向、INCJの業績面、など紹介したが、ここでは、鴻海とシャープが組んだ場合のシナジー、鴻海の狙い、について考えたい。

 

鴻海の課題

 

まず、鴻海の現状である。これまでは業績は急拡大だが、EMSの限界か宿命か収益性は低い。中国に巨大な工場を建設してきたが、労働問題やコストアップが課題であり、低い営業利益率が更に低下傾向だ。現在は、拠点をインド等にシフトしている。

 

また、売上の50%を依存するスマホも成長鈍化しつつあり、最大顧客のアップル自体も新分野を開拓しきれておらず、i-TVや、i-ウォッチも期待外れである。その中で、鴻海もアップルも、お互いに依存度が高かったが、鴻海もアップル依存度を下げ、アップルもペガトロンやコンパル等を使い、鴻海依存度を下げている。

 

次に向けての戦略としては、ブランドメーカーの買収、光学技術(液晶パネル、デジカメレンズ) 素材技術(フィルム、タッチ)、環境技術(LED、ソーラー)であったが、シャープを手に入れることで、かなり達成されよう。さらに、ソフト、クラウド、通信キャリア、家電量販には既に出資、ロボット(pepper)、クルマ、EVカー(テスラ)も手掛けている。

 

売上20兆円、130万人、多様なEMSを手掛け、次世代を支える幹部も育っているし、テリーゴー氏も元気であるが、カリスマオーナーゆえのトップの後継者問題もある。

 

 アップルもSジョブス死後、スマホ等の買換え短縮による成長モデルも飽和しつつあるが、アップルと鴻海は表裏一体であり、アップルの「下半身・足腰」である鴻海にとっても同じ課題である。

 

 整理すると、第一に、EMSとしてのコストダウン、付加価値向上や要素技術習得、第二が、スマホ以外への展開とその要素技術の習得、第三に、脱EMSとしてのブランド習得や通信キャリア参入などであろう。第一の例は、イノラックスやチメイ買収など液晶パネルメーカーやデジカメのプレミア等他のEMS買収やこれまでの電機メーカー工場買収だろう。第二は、テスラ等EV向けやペッパー君などロボット向けEMSである。第三でも、中国4G通信キャリアや家電量販店への出資があげられよう。シャープでいえば、第一の液晶やカメラモジュール、第二では、コピーや白物など要素技術、第三はブランドである。

 

鴻海・シャープ・JDI・東芝家電を横比較

 

そういう鴻海の状況を踏まえて、鴻海とシャープとJDI、東芝の家電を横比較する。同じ電機メーカー系ではあるが、鴻海とシャープは、液晶だけでなく、全事業の比較、シャープとJDIは液晶、FPDの比較、東芝家電とは家電だけの比較であり、下表では一つにまとめているが、カテゴリーが異なる三つの比較がある。なお、事業を超えた全体の比較は最上段に示す。

 

 まず、経営全体だが、経営者に関しては、これまでの実績などから見て、鴻海が最良である。これは、テリーゴー個人だけでなく、経営陣全体も含めてである。テリーゴー氏が有名だが、20兆円130万人の企業となった今、一人で全部ができるはずもなく、優秀な幹部やアドバイザーもいる。更に、その人脈も、アップルや中国政府だけでなく、ソフトバンク孫氏やアリババ馬氏、Nidecなどにも広がっていよう。シャープ等の人脈もあるが、グローバルの広がっている点では比較にならない。JDIは、上場後まだ日があさく現経営陣の評価もまだ早いのは事実であろう。