2016年3月30日 シャープが鴻海傘下、正式発表、両社トップの記者会見は堺で4月2日

 

シャープ、鴻海が30日夕方、正式に合意を発表、適時開示もされた。ほぼ、先日の日経報道などに沿った内容であり、出資金額1000億円の減額(株価118円⇒88)、払い込み期限は105日、メインバンクは3月末の5100億円返済期限を1か月延期。なお、1000億円の補償金はやや不明な点がある。

 

 出資金額が1000億円減額されたため、225日のファイナンス発表で示された設備投資も1000億円減額されたが、OLED2000億円は維持。それ以外、液晶1000600億円など減額。

 

225日開示との相違点に注意

 

 また、1000億円減額に関わる内容以外で、225日開示との相違点は、①ソーラー部門のリストラ(前回は、シャープ一体経営で現在のポートフォリオを維持)、②万が一(鴻海の都合でなく)、期限までに出資金が払えないなど破談になった場合は、ディスプレイ部門は、適正な金額で鴻海あるいは鴻海が指定する第三者に譲渡する、という点が注目される。このうち、①は、これまでも、テリーゴー氏が強調していたので違和感がないが、②の意味するところが、鴻海側の要求かシャープ側の要求か、また、最低限、ディスプレイ部門を確保したい、ということだろうが、鴻海が指定する第三者、というのが、イノラックス等を意味するのかどうかが不明。払い込み期限が105日と半年後だが、上記の事項や、偶発債務も含め、100%ではないことには留意が必要だろう。

 

業績修正だが最終赤字額は非開示

 

 同時に、シャープは今期業績を下方修正、売上2.72.45兆円、OP100→赤字1700億円、理由はこれまでも指摘した、液晶パネル在庫の評価損に加え、液晶TV在庫増に伴う販促費や白物家電やOA不振が理由のようだ。セグメント別内訳などは非開示。

 

なお、鍵となる最終損益は精査中として引き続き非開示。OPの修正幅が大きいが、従来は、特損で落とす傾向が多かった在庫損などをOPで認識したためで、サプライズや違和感はなく、むしろ、健全化の方向としてプラスに評価したい。

 

最終損益は、保証金1000億円の期末までの支払い如何にもよる。さらに重要なのが包括利益であり、年金債務や為替調整勘定次第。最終損益と包括利益の合計が赤字2700億円を超えると債務超過となる。

 

 風水にもいいという、42日に堺工場で、会見、説明会で、参加するが、可能な限り、確認したい。いずれにせよ、この1年間、ブログでもフォローして、特に、この1か月はハラハラさせたが、シャープが倒産を免れた、バラバラに解体されずにすんだこと、また、シャープの良いところを理解し、シナジーもある鴻海傘下で、再生できることは喜ばしい。鴻海側の記者会見でも、「シャープを再び電子産業のリーダーとし、世界的企業の栄光を取り戻す」との発言があったが、そうなることを期待したい。

 

鴻海の経営重心®

 

 鴻海はシャープを傘下に入れることで、EMS主体から、家電やOAも含めた総合電機へ、業態を変える。ただ、経営重心®では、それほど大きく、変わるわけではなく、やや左下へシフトする程度である。また、東芝の白物家電の経営重心®を示すが、シャープと鴻海の方が、距離は近く、親和性はいいだろう。

 

 なお、鴻海は、EMSだけでなく、傘下のイノラックス等の部品事業もあり、家電量販やソフト、通信キャリア事業にも投資している。また、EMSもアップルだけではなく、PCメーカーやゲーム、TV、ルーター等NW機器、プリンタやコピー等OA機器、クルマ(テスラ等)、ロボット(ペッパー君)なども手掛ける。重電や半導体前工程以外は、殆どある。シャープの事業で、EMSの有無にかかわらず、重複が無いのは白物家電くらいだろう。

 

 短期では、買収後、シャープの液晶パネル部門はイノラックスや堺と合体され、部品事業として、アップルだけではなく、セットメーカーに、OLEDFPDを供給する。ここでは、後工程の部材調達も含め、世界3位のイノラックスと組むことでシェアも向上、コスト削減、シナジー効果が大きい。

 

 中期では、加えて、鴻海の既存のEMSと利害相反のない白物家電はシャープのブランドで、鴻海の流通網を使って世界に売り、部材調達も安くできる。また、OAも含めた技術はEMSにもプラスだろう。さらに、シャープの応用開発力や、研究開発は、EMS、ブランド商品も含め、プラスだろう。