2016年5月5日 メルコホールディングスの決算説明会と中期ビジョン(4月28日)

 

428日午前に説明会、集中日だが参加者は多い。説明は松尾副社長、IR担当の田淵氏、仲須氏。今回は、通常の決算説明だけでなく、昨年51日に創業40周年を迎えたこともあり、中長期の経営の方向性について示されたことが重大なポイントであろう。すなわち、過去3年の構造改革の実績を踏まえ、中期ビジョンの概念が提示され、コーポレートステートメントも刷新された。

 

40年周年の中で30年を見てきた

 

メルコとは上場前から30年の付き合いであり、80年代後半、PC時代の本格到来を前に、当時の牧社長(現会長)と、売上1000億円になるかどうか(既に突破した)、議論したことが懐かしい。牧会長は、同社だけでなく国内PC産業を牽引してきた優れた経営者にして、理論物理を目指したこともあるが顧客志向でもある優れた技術者であり、同時にDRAM市況を読む名人でもあった。それゆえ、この説明会には、メルコに関心があるだけでなく、DRAM市況やNANDフラッシュの市況について知見を得たいというアナリストや投資家も多く参加してきた。

イノベーション普及のボトルネックを技術力で解決

 

当社は、「PCの矛盾(便利だが使い難い)を解決すること」であり、PCが急速に発展する中で、ボトルネックになるところに、最適な製品を提供、解決してきた。具体的には、1975年創業以来、1982年には、「プリンタが遅い」という問題を、プリンタバッファで解決、バッファローブランドを築いた。1988年には、「MPUは速い筈なのにPCは遅い」という問題に対し、メモリーボードを出した。1992年には、ネットワーク化に対応してLAN製品を出し、1994年にはハードディスクに参入、1996年は液晶モニタを始めた。2000年以降は、デジタルホームやブロードバンド市場が本格普及する中で、その使いにくさを解決する技術、あるいは、平均3年買換えのPCと平均7年使用の家電の技術進化の差を埋める周辺機器を開発提供してきた。

 

コーポレートステートメント刷新

 

 今回の説明会では、こうしたメルコの発展成長の中でのコーポレートステートメント、1990年は「パソコン、もっと使いやすく」、2000年は「インターネット、もっと使いやすく」、2006年からは「デジタルライフ、もっと快適に」であったが、今回からは、IOT時代に相応しく、「つなぐ技術で、あなたに喜びを」となった。この「つなぐ」は単に、ネットワークや周辺機器、IOT時代の、ヒトとヒト、ヒトとモノ、モノとモノを「つなぐ」という空間的な意味だけでなく、時間を超えて、データやコンテンツ、記録や記憶さらには文化も後世に伝える、という意味、そして、会社とステークホルダーをつなぐ、という意味もあるのではないだろうか。まさに、空間的な意味では、根っこが生えて伸び、枝が伸びて葉が繁っていく「森の経営」の広がりであり、時間的な意味では、「千年企業」の永続性であろう。

 

中期ビジョンはゲートウェイ2.0

 

 また、中期ビジョンの概念図として、ゲートウェイ2.0が示され、IOT時代の社会全体に安心ネットワークを提供するものとして、ホームネットワークイノベーション、パブリックゲートウェイソリューション、データストレージオプティマイゼーションの三つの円が示され、そこが今後のメルコの事業領域となるようだ。

 なお、資本政策として、①総還元性向80%を目指す、②長期的EPS成長を目指す、が示された。

 

過去3年の構造改革

 

 このような中長期ビジョンが示された背景としては、ようやく過去3年の構造改革が完遂されたことも背景にあろう。

 

業績動向

 

 2015年度は売上800億円、OP43億円、NP37億円。2016年度は売上830億円、OP35億円、NP35億円。増収減益だが、背景は、R&D先行投資と為替120円前提と保守的に見ているため。同社は海外調達が多く円安はデメリット。

 

経営重心分析

 メルコの経営重心は、かつてはコアのPCに依存していたが、この20年で徐々に変化している。