2016年5月6日 パナソニックの決算説明会(4月28日)~調整後営業利益に戸惑う投資家アナリスト

 

 428日の夕方に決算説明会だが集中日の上、3月末に経営説明会に参加、2016年度の目標も出ていたので、あまりサプライズもないだろうと思ったらそうでもなかった。テレコンを質疑も含め視聴したので報告する。http://www.circle-cross.com/2016/03/31/2016331-パナソニックの経営説明会/

 

 津賀CEOも出席だが、説明は河井CFO、質疑対応は分担。質疑は、決算関係以外はテスラの話が多い。

 

IFRSと米国基準の差が大きく調整後営業利益って何?

 

 面喰って戸惑った投資家アナリストも多かっただろう。2015年度は、これまで通り米国基準だが、2016年度からIFRS適用で、その差があまりに大きい上、「調整後営業利益」なる数値が示されたからだ。

 

2015年度の米国基準の営業利益は4100億円、当期利益は1800億円と、331日の説明会に沿ったものだったが、2016年度は、米国基準とIFRSが併記された上、IFRSでは、営業利益3100億円の他に、「これまでの営業利益に近い」数値として「調整後営業利益」3850億円が出された。米国基準での調整後営業利益の数字がないが、IFRS2015年度の調整後営業利益を逆算すると4132億円となり、米国基準との差が1800億円もある。

 

会社側は、米国基準とIFRSの差に関して、通常の違いに加え、特に、①売上では、持ち分50%以下でも主体があれば連結され、この影響が1000億円、②R&Dでは、相手が特定できるものは資産計上していいので、インフォテインメントで100億円分ある、と説明した。

 

また、調整後営業利益と営業利益の差については、2015年度は、①リストラ費用が658億円、②法務関連費用が691億円、③品質問題対応などあり、差が大きかったとした。2016年度も750億円の差があるが、今後は差が縮小していくとのこと。

 

IFRSの精神は時価

 

この説明については大いに、違和感を抱いたのは私だけでないだろう。会社が今後、営業利益か「調整後営業利益」を重視するのか不明だが、もし後者であれば、大問題であり、IFRS導入の理念や背景を理解していないことになる。、調整後営業利益を重視するようであれば、IFRS導入の意味がなく、これまでの過大投資、目先利益重視の愚を繰り返すことになる。もちろん会社側は、特にIRサイドでは、これまでの米国基準との継続性から、開示するというのが趣旨だろうが、この調整後営業利益が独り歩きし、事業部側や、投資家アナリスト側も誤解することを恐れる。

 

研究開発費であまりに違う計上基準

 

また、研究開発費でユーザーがあるものについて、資産化するというのは、先日のNECの方針と異なる。あるいは、NECの基準であれば、研究開発費ではなく、単に製造原価ということになるのかもしれない。

 

IFRSは、時価をベースにしているだけに、割引率なども含め、将来の見通しの前提の中で、足元の数字が変わり、主観性が強くなる。それだけに、前提開示や統一性が長期の投資家保護のために重要だ。

 

変化自在

 

FCF1500億円以上という目標も、戦略投資を除いてとあるが、その定義や中身が不明確だ。PLDはリストラしない売却や事業譲渡しない、というメッセージなのだろうが、却って分かり難かった。やはり、津賀政権後半に入り、何度か指摘しているように、一貫性がなくなり、IFRS導入も含め、変化自在、融通無碍となってきたように思う。