2016年5月10日 ヒロセ電機の説明会~キャッシュを貯めたり、株主還元している時ではない

 

11~12時で説明会、福本氏の業績説明の後、石井社長が中計戦略を語った。せっかくの内容なのに質疑の時間が10分しかなく、延長はされたが、やや消化不良。質問は、私をかわきりに、車載・産機への中期展開への疑問が中心であった。やや質問を優しく聞いたが厳しく端的に聞くべきだった。電子部品はアナリストの意識が徐々に中長期に変わりつつあり良い傾向。会社側と投資家がまだこなれていない印象。

 

業績動向

 

 業績は、2015年度は売上受注共に1203億円、OP288億円、NP211億円。受注は4Qが更に落ち込んだ。受注指数は全体で88だが、スマホが80、クルマは112、産機が93だが、産機も2月は86がボトム。

 

 2016年度は売上1120億円、OP270億円、NP195億円と微減収微減益だが、円高影響が90億円、他方、減価償却の会計基準変更でOP36億円あり、これがなければ減益幅は更に大きい。前提は、スマホは16%減、クルマは+3%、産機は5%減と固め。

 

中期展開

 

 2016年はボトムの年として、2018年度に過去最高の2014年度を更新したい。その中では、スマホ向けの比率が下がり、スマホ、クルマ、産機が、それぞれ1/3へ。スマホと異なり、クルマや産機はサイクルが長いのでより中期視点での経営が重要になる。スマホは、台数成長は一桁前半に鈍化だが、その技術をドローンやウェアラブルに横展開。技術では、スマホ向けの高速高周波と、産機クルマのハイパワーが両輪となる。

 

 部品メーカーは猫も杓子も車載・産機

 

 スマホ市場の鈍化をうけ、車載・産機に広げようとしているのはヒロセ電機だけではない。しかし、その市場はスマホとは、業界構造、技術など大きく異なる。スマホ市場については、台数成長鈍化だけではなく、員数も大きく増えない可能性があろう。もちろん、スマホ向けの技術は、ドローンやウェアラブルなど多くのIOT分野に広がるのも事実であるが、それぞれの市場はまだ小さく、ボリューム効果が効きにくい。

 

そこで、猫も杓子も、クルマ、産機だが、これは、技術も業界構造も大きく異なる。それ故に、これまでの優位性や高収益性が維持できるかどうか疑問である。

 

何のためのキャッシュか?株主還元している時なのか

 

 それゆえ、次の成長に向けて、やるべきことは、この5年でスマホ向けに合せた企業構造を、クルマ・産機向けに転換することであり、設備や技術、営業などの大転換である。場合によっては、減損もあるかもしれない。あるいは説明会でも質疑が出たM&Aかもしれない。ヒロセ電機は、またIFRS導入前であるが、2018年までの数年のうちに、コネクタ事業での構造変化と、財務的構造変化が同時に来ることになる。であれば、2016年度は、その構造変化のための準備期間であるべきだろう。株主還元を充実している時ではないはずだ。