2016年5月12日 シャープの説明会~悔いなし

 

51218時より注目の説明会だが、本日は、15時半から東芝、17時からJDIもあり、10分遅れ、プレゼンの途中から参加なので、後で周囲に確認したものの不十分な点もあるかもしれない。説明は、高橋社長、榊原氏だが、高橋氏は、鴻海払い込み完了後に退任、榊原氏含め他の取締役11人は、623日の株主総会で退任(現役員で残るのは長谷川氏のみ)であり、説明会登場は今回が最後だろう。

 

決算の実績は道済みでサプライズはないが、かなり膿を出し切った。鴻海の戴氏も社長就任、本社の堺移転は報道通り、役員人事では、現役員は基本退陣、ただ、今期の予想は鴻海とのシナジーが不明だとして非開示。人員削減については言及無し、また一瞬、資料にあった7000人削減はミスプリだったようだ。

 

膿はかなり出し切り双方の偶発債務認識はなく在庫も健全化

 

2015年度業績は売上2.46兆円、営業赤字1620億円、経常赤字1924億円、純損失2559億円。330日付け修正の売上2.45兆円、営業赤字1700億円より上ぶれ、また連休前後の報道で、債務超過は正しかったが、最終赤字3000億円ではなく2500億円の方が近かった。その他包括利益悪化がPBOと為替調整勘定で200億円ずつ程度あり計435億円、債務超過が312億円であり、マイナス金利や急な円高による包括利益減が無ければギリギリセーフ(100億円程度)だったことになる。実は会社にとっても、これは想定外だったのかもしれない。最終赤字3000億円という報道は包括利益の分を混同したのだろう。

 

今回4Qでは偶発債務懸念のあったものも含め営業コストベースで落とすべきものはかなり落としている。家電の販促費関連358億円、ポリシリコン関連77億円、棚卸損775億円(大半はパネルだが470億円は評価見積を厳しくしてゼロまで落としたものもある)4Qでも減損などはあったが特別利益150億円、特別損失150億円弱であり、大半を営業内で処理している。ここは、もう少し特損を落とすのかと思った。

 

在庫は、健全化しており、全体では12月末の1.4か月が0.9か月、液晶パネルは1300億円あった在庫が500億円以下、一か月以下へ。期待はしていないがゼロ評価のものもあり売れれば黒字となる。

 

 セグメント別には、コンシューマーエレクトロニクス(以下CE)200→赤字218億円、エネルギーが-7-184億円、ビジネスが380358億円、電デバが18014億円、ディスプレイが-300-1291億円であり、リストラ費用を除けば、ディスプレイが大半。ディスプレイは在庫評価損を除いても4Qだけで500億円近い赤字である。1-3月の亀山などの稼働率はかなり低く調整は進んだ。

 

シナジー未定だとして今期見通しは出資後

 

 2016年度見通しは現在、出資前でもあり、鴻海とのシナジーが不明だとして未定とされた。4-6月については、シナジー前だから予想は可能だが、ガイダンスも避けられた。4Qの営業赤字1300億円から、在庫損などリストラ費用の1200億円を除くと、100億円の赤字だが季節性も考えると200-400億円の営業赤字の可能性はあり、前期1Qの赤字287億円以下であれば大健闘だろう。

 

2Q以降は、液晶以外は、シナジー効果次第では黒字化、仮に液晶市況が改善すれば、全体で黒字化もあろう。ただ、他方で、OLEDの先行投資の赤字が大きいかもしれない。OLEDの先行投資負担が大きくなるのは2017年度だが、それ前に一度、シナジー効果によるV字回復を見せるのもいいかもしれない。

 

シナジーに関しては、定性的だが、シャープの独時の目の付け所の商品開発力やブランドと、鴻海の世界最大の生産能力、グローバルな顧客基盤などから幅広いシナジーがあるとした。桁違いの生産力や調達力のメリットは大きいと強調された。

 

三つの構造改革

 

 示された3つの構造改革は、①経営資源の最適化として、本社の堺移転、東京オフィスの幕張一部移転、鴻海拠点活用で海外拠点集約、人員の適正化(ただし人員規模は未定)、②再生加速の事業推進体制として、IOTや健康などCEカンパニー再編と収益責任明確化、本社スリム化、③成果に報いる人事制度として、クロージング後に早期給与削減を廃止、成果報酬制度、職務処遇、である。

 

このうち、①は既に報道されており、②も台湾等で報道、③はまさに飴と鞭の鴻海流経営である。

 

 まず、生産や調達でのシナジー効果、資金投入での新商品開発や営業強化、ある意味海外では当然のテリーゴー流の経営により、下期の回復は大きいだろう。

 

役員体制

 

 新しい体制は、払い込み後、高橋社長が退任すれば、シャープ生え抜きでは、代取で執行役専務のAV担当の長谷川氏、SDP会長経験があり副社長執行役で財務担当の野村氏、白物家電の沖津氏、鴻海側から、戴氏および劉氏、高山フォックスコンジャパン社長、テリーゴー氏と親しいが、社外で、生産技術の大家でビジネス経験もある中川東大名誉教授、社外から松下寿OBでロボットCTO、コニミノ顧問の中矢氏、ソニーモバイルの役員を経て楽天などでコンサルタントの石田氏の9名となる。中川名誉教授は社外役員だろう。

 

生え抜き3名の他、多様性と中立性に富んだ布陣だろう。これにSDPのトップがいずれ関わってくることになろう。現在の銀行・官僚・弁護士などが中心の経歴は立派だがビジネスに疎そうな体制とは、真逆に、現実・現場感が溢れている。

 

諸条件はやや不明点が残る

 

 これまでも開示発表資料が多く分かり難いが、延長したローン金額は5100億円ではなく、一部、弁済があり、やや少ないようだ。金利水準は、428日以降は下がるが具体的数字は非開示。C株転換後の権利など契約内容も不明。

 

 なお、鴻海からの前払金1000億円は、現預金/預り金(負債)で計上だが、630日後、現預金/資本、という仕訳になる。

 

特別条項

 

 マスコミで鴻海の狙いで憶測があった万が一の特別条項は、①独禁法が万が一の場合、②天変地異でシャープの資産が半減するような場合を想定していたが、現実には、そういう場合は、ディスプレイも価値がなくなるので意味はないという考えだったようだ。1000億円の前払金は、万が一、破談した場合に、シャープに瑕疵なく鴻海に問題があった場合は返還せず、逆に鴻海に瑕疵なくシャープに問題があった場合は返還という条件であったが、それ以外の場合のリスクを想定するものだったようだ。いずれにせよ、これは共有しているし、鴻海がディスプレイだけを欲しいということはないようだ。

 

東証二部

 

 今回の債務超過で東証二部となるが、払い込みが終わり債務超過を脱すれば、早期の一部復帰もありえ、上場廃止などは考えていない。特に、二部であるための金融などでの制限はないようだ。通常の赤字なら、2Q以降、債務超過を脱せられるが、仮定の話として数千億円の赤字が出て債務超過が継続した場合の条項等はないようだ。偶発債務もないとの認識で一致しており、監査法人が変わり、鴻海傘下となっても、会計処理の変更はない。また、持ち分法適用のSDPとの株主関係がどうなるかは不明。

 

鴻海案を選んで悔いなし

 

 高橋社長が鴻海案を選んだ背景は、早期のシナジー効果とシャープ一体運営だったとした。金額面はむしろ銀行サイドの話だとした。これは、従来から指摘した通り。

 

 人員削減についてもいろいろあるが、シャープも最近2回リストラをしているし、未来永劫ないわけがない。適正人員にするのは当然であり、ある時間軸ではポートフォリオ組替えもあると認識している、と語った。ディプレイとの一体運営も、将来は、SDPなどとくっつけた方がいいかもしないだろう。現状は、以前と比べて、想定通りだとの弁だった。