2016年8月3日 会長の役割はエコシステムの構築

 

海外の経営トップの話を聞いたり、経営戦略の書籍を読んで、日本で見聞きしないキーワードは、「エコシステム」である。エコシステムというと日本では地球環境の話を連増するが、企業を取り巻く生態系のことである。エコシステムの一側面は、サプライチェーンであり、別の側面は、オープンイノベーションである。日本が、欧米いや中国台湾韓国も含め海外企業と比べて、圧倒的に弱いのは、エコシステムの構築ではないだろうか。

 

エコシステムとケーレツ・業界団体

 

 このエコシステムと似て非なるものは、ケーレツ、経団連、工業会、旧財閥や銀行系などの企業グループであり、これらの存在が、最適なエコシステムの構築を阻んでいののではないだろうか。これらの団体やグループが固定的・階級的・官主導であるのに対し、エコシステムは、動的・フラット・イノベーティブであって、企業のダイナミズムや戦略によって多様に変化するものだろう。

 

 エコシステムは、イノベーションが起こり、新しい業界が生まれ、成長する中で、企業と共に発展変化していくものだろう。その本質は、最初は、工業会に属さず、学会もなく、統計分類に入らない類のものだろう。

 

新時代の会長の役割

 

さて、前に社長の定義について述べた(http://www.circle-cross.com/2016/07/28/2016728-社長の再定義と会社の種類/ )が、会長も同様であり、社長は、①象徴・御飾り、②資本家的存在、③事業家、だが、会長は、③はないので、①と②であろう。よく会長と社長の役割分担が、就任記者会見なので話題になり、会長は「業界団体活動、より大所高所から長期視点」というが、ガバナンスコードや会社法が変わる中で、上記の②など、株主視点の多くの役割は、社外役員や執行役ではない「役員会」にシフトする。ならば、ますます、①や業界団体活動ということになるのだろうか。これは真に勿体ない。

 

そこで、新時代の会長の役割は、ズバリ、エコシステムの構築であろう。企業を取り巻く近傍の環境整備、ポストコンペティティブな時間軸は、社長、CEOだろうが、より空間的に広い環境整備や、プレコンペティティブな領域は、自由度があり、顔が広い会長によって、戦略的にエコシステムを構築すべきではないだろうか。固定的で上下関係が強い業界団体活動ではなく、動的で上下がなくフットワーク軽く人脈を生かして、企業の利害を超えて、新産業発展に尽くしつつ、結果的に企業に果実をもたらすような活動、活躍が望まれる。