2017年1月5日 産業革新機構(INCJ)でなく原子力再編機構を

 

昨年より、産業革新機構の問題点については、それ自身について、また、シャープを巡る再編やJDIの再生などに関連して、何度も指摘している。

 

https://www.circle-cross.com/2015/08/25/2015822-産業革新機構の折り返し点の評価/

 

https://www.circle-cross.com/2016/02/27/2016226-シャープは何故-鴻海を選んだのか-incjの本来の役割は/

 

https://www.circle-cross.com/2016/01/16/2016116-incj再考-ミイラ取りがミイラになるリスク/

 

https://www.circle-cross.com/2016/08/20/2016820-incj-バークシャー-ハサウェイ-ソフトバンク-日清紡グループ-コングロマリット/

 

https://www.circle-cross.com/2016/12/12/20161212-鴻海-シャープ-jdi-incj問題を振り返る/

 

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO97172410Q6A210C1NNS000/

 

http://mainichi.jp/articles/20160603/ddn/004/070/052000c

 

 シャープ問題でも、当時は大方が鴻海買収に反対であり、日経でも賛否が分かれていたというが、少なくとも、現在のシャープとJDIの業績動向からは、その是非は明らかであっただろう。改めて、大方の予想に反し各方面からの圧力に屈さず、鴻海案を選んだシャープの高橋前社長以下の経営陣は最後の最後に良い仕事をしたと言えるだろう。年末のBSジャパンの討論会でも、アンチ鴻海派の主張は電機業界や産業革新機構に対する理解不足、あるいは当人らも認めていたように感情論や偏狭な国粋主義志向によるものだろう。

 

7つの問題点

 

 産業革新機構について、これまで指摘していた問題点は、①そもそものスキーム問題、②ガバナンス・コンプライアンス・ディスクロージャー問題、③国内再編に拘り、グローバル視点欠如、④人材、特にハイテク分野やグローバル視点のある人材や人脈不足、⑤リサーチ力、リサーチマインド、⑥案件のフェアネスや政治問題、⑦資金規模の問題、である。

 

加えて、もはや時代遅れの水平分業でのレイヤーマスターでの統合しか考えていない視野狭窄、さらに、そもそも、民業圧迫・公正取引委員会ガイドラインもある。

 

EXITの備え、資産の減損判定をすべき

 

 更に、もう折り返し点を過ぎ、EXITに備えなければいけない中で、ジェニュージョン社等、初期の案件の損失も顕在化してきたが、まだ大半が簿価のままの評価というのは大問題であり、早急に、全案件の時価を試算すべきだろう。それこそ、東芝どころではない。場合によっては、大きな不良債権となり、2020年以降に、アベノミクスの代償として、日銀の国債買入と並ぶツケになるかもしれない。

 

実態は総合電機の不良事業救済機構だが

 

 その上で、そろそろ、実態は「総合電機の不良事業(半導体と液晶)救済機構」であり、イノベーションや成長に真逆な、官主導、国内中心の中途半端な規模の、このファンドの在り方を見直すべき時だろう。ベンチャー支援も、あと7年となった今では、もう長期も難しい。イノベーションや成長は、民間などに任せ、もし発展的に残すならば、現在の体制に向いた「国内の規制産業再編、地方再生」などに方向性を変えるべきだろう。もし、イノベーションや成長に拘るなら、中国ICファンドの規模が10兆円規模であることから、その程度の金額と、グローバル視点の人材、が必要であり、体制や人材、陣容を一新する必要があろう。

 

原子力再編機構なら官主導ファンドでいい

 

 その最大の候補は、1兆円を超える債務の可能性も出てきた東芝の原子力である。また、現在は、表面化していないが、長期でのリスク、不透明が多く、政府が関与している日英の原子力事業も同様だ。長期リスクを試算し、必要であれば、日立や三菱重工も含め、統合・再編すべきだろう。場合によっては、10兆円、20兆円とも言われる東電も含め、長期で処理する仕組みをつくるべき時だろう。当然ながら、産業革新機構が出資し、東芝傘下のランディスギアも含めてもいい。そもそも、原子力は規制産業であり、国際的な政治問題もあり、民間ファンドでは難しい。そこにこそ、現在の産業革新機構のメンバー等の活躍の余地もあろう。