TDKの変貌〜5月11日の会社説明会を振り返って

 

去る5119時半〜昼過ぎにかけ、TDKの説明会が開催され参加した。広い会場だったが、同社への期待や変貌への関心からか超満員。参加者も、石黒社長、植村副社長、逢坂常務、齋藤常務、Zichlarz常務、永田執行役、山西執行役、Ong執行役、エナジーデバイスの指田氏、技術知財の松岡氏、磁気センサのBopp氏、AmperexLam氏と、幹部の大半が出席。プレゼンは、まず、山西氏による決算業績説明、その後、石黒社長が全社戦略、受動部品戦略が植村氏とZichlarz氏、センサ戦略が齋藤氏、Bopp氏、HDDヘッド戦略がOng氏、エナジーデバイス戦略が指田氏とLam氏、その後が質疑。同社では、これほど、大人数かつ長時間の説明会は、初めてであり、実態は、いわゆるIRデーだ。また。他社も含め、私の知る限り、こうした説明会に外国人が多数プレゼンするのも例がない。

 

こうした大勢の参加は、個々の性格やプレゼン能力も相対比較でき、幹部同士の雰囲気もわかり、会社を理解する上で、大変参考になる。当然ではあろうが、最もメッセージが伝わったのは社長であった。

 

決算は入繰り多く実態ベースに注意

 

 2016年度は売上1.17兆円、OP2087億円、NP1451億円だが、QコムへのRF系の事業譲渡益1444億円や減損212億円を除くと、実質はOP855億円。ただ、ここから、RF部門の切り出しが、SAWフィルタなどがあり、これを除くと、売上1.05兆円、OP600億円となる。

 

2017年度は売上1.11兆円、OP800億円、NP550億円であるから、やや減収減益になるが、実態は、売上1.05兆円、OP600億円からになるため、増収増益。為替は108/$118/€と横這い見込み。CAPEX1600億円、DEP880億円、R&D860億円。前期は同順に、1676億円、875億円、913億円。

 

 なお、セグメント変更あり、これまでの受動部品、磁気応用、フィルム応用、その他、から、受動部品、センサ応用(受動部品より温度圧力センサ、磁気応用より磁気センサ、その他からMEMSマイクロフォン)、磁気応用製品、フィルム応用となった。

 

 石黒社長は、現中計では2017年度のOPM10%以上、ROE10%以上の計画に対し、現在のガイダンスが、それぞれ7.2%6.8%である理由として、受動部品や二次電池の収益水準、買収企業の収益貢献タイミング、磁石事業の再構築遅れ、また、一部、M&Aが実現しなかったことをあげた。その上で、今後は、Qコムとの提携関係を利用しながら、事業を大きく再構築することを主張した。

 

 こうした施策により、2020年度には売上1.5兆円、OP2000億円規模を目指すようだ。まさに、下図のように、Qコムと連携しながら、ICT、クルマ、産機などに、センサやアクチュエーター、パワーを提供していく戦略である。センサ売上は現状900億円強だが、2020年度に2000億円程度、OPM二桁を目指す模様。買収したインベンセンスはファブレスゆえに製造面でシナジーがあり、応用も、技術も、磁気以外の分野が多く補完関係にある。

 

 もはや、TDKは、村田以上に、これまでのような、電子部品メーカーではなく、センサ・モジュール・デバイスメーカーだ。村田が垂直統合でクローズド戦略に対し、TDKはオープンイノベーション志向であり、また、スマホからよりクルマやIOTへシフト。