年末年始の読書から

 

11月中旬と12月末に、手術入院もしたこともあり、11月半ばから年末年始にかけ、いろいろな本を読んだ。

 

 経営学やMOT、電機業界関係では、「コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則」(フィリップ・コトラー)「日経テクノロジー展望2018 世界を動かす100の技術」(日経BP社編集) 2冊が2017年の新刊でもあり、お勧めだ。

 

「コトラーのマーケティング4.0は、スマホが中心のデジタル時代では、オンライン交流・チャネルだけでなく、逆に、オフライン交流・チャネルが重要にもなり、デジタル・マーケティングと伝統的マーケティングの統合が必要になる、というのは実感する。

 

「日経テクノロジー展望2018 世界を動かす100の技術」は、日経BPのエレクトロニクス、メカトロニクス、建築土木、医療、バイオ、ITといった諸分野の200人近い専門記者が、連携し将来を展望、今回で、4回目だという。その中で、各編集長が重要な11トレンドを選んだ。そのトレンドに、69の技術が含まれ、その他、52件の技術と併せて、121件の技術が分かり易く解説されている。MOTなどのケース本として、議論の題材としては、最高だろう。

 

「少数株主」(牛島信)は、日本の99.8%を占めている非上場企業のガバナンス問題を取り上げた小説だ。著者は、ガバナンス問題が専門の有名な弁護士だ。問題意識としては興味深い。日本の企業の内部留保は400兆円というが、その150兆円が未上場企業であり、その殆どが同族企業でガバナンスが問題で少数株主が立ち上がるべきだという。日本の社会、特に地域社会に深く根差している同族企業が、今後、牛島弁護士の主張のように、ガバナンスが強化され、稼ぐようになると、プラス面でもマイナス面でもインパクトは極めて大きい。パンドラの箱を開けることになり、恐ろしい気もする。

ハーバードビジネスレビュー 201801月号 (テクノロジーは戦略をどう変えるか)は、興味と期待を持って読んだが、期待外れだった。ポーター教授によるARVRの分析、ドローンのケースは参考になったが、それ以外は、陳腐だ。

 

「戦略分析ケースブック~サントリー/エルピーダメモリ/新聞業界家/電量販店業界/京セラ」(沼上幹/ 一橋MBA戦略ワークショップ)は、MOTの授業で使おうかと買った。2011年末に出た本だが、2012年に破綻したエルピーダを絶賛している。京セラのケースも含め、底が浅い。

 

「東芝はなぜ原発で失敗したのか」(相田英男)は、原子力の専門エンジニアの著であり、マスコミが書いた「テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅」(児玉博)、「東芝の悲劇」(大鹿靖明)と異なり、参考になる。前半がフクシマ原発問題や各社の原子力の技術力についての評価が詳しい。

 

「大予言「歴史の尺度」が示す未来」 (集英社新書 吉見俊哉)は、経営重心の固有周期の発想に近い。 

 

「経済指標のウソ 世界を動かす数字のデタラメな真実」( ザカリー・カラベル)は、統計の歴史にふれつつ、その問題点を指摘しており、その通りだと思うが、マクロ統計については、アメリカ中心であり、15~16世紀に、日本で大名などの石高制度や、検地を知らないのだろうか、と思った。

 

「世界神話学入門」 (講談社現代新書 後藤明) は、世界に共通の神話について分析している。昔から、神話には、共通点が多く、それが、人類共通の記憶か、DNAや文化によるものか、さらには、原始人からホモサピエンスにどういう仮定で、知性が発展したかに関心があるため、読んだ。

 

「日本二千六百年史」( 新書版 大川周明) は、かのA級戦犯になった大川周明の書籍の再販だ。太平洋戦争に至る認識に関心があったが、むしろ、そもそも、なぜ、歴史書があるか、という問題提起と分析に感心した。

 

「日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで」 (中公新書 磯田道史) は、新聞の宣伝で見て買ったが、知っている話が多かった。

 

「この世界の片隅に (アクションコミックス)(こうの史代) は、クラウドファンデングで映画にもなり、大ヒットで話題になった原作の漫画、上中下がある。著者が、広島出身だが、現在は、小生の故里の福知山在住であることも興味深い。テーマは反戦ではなく、真の幸せは何か、というもので、そこを間接的に淡々とした描写から共感できる。

 

「東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる」 (講談社+α新書 兵頭二十八) は、タイトルから、つい買ってしまった。北朝鮮の脅威を地理的に考察している。横須賀が危ないらしい。

 

「血流がすべて解決する」(堀江昭佳)は、ちょうど心臓手術だったので、買ったが、女性向けの本、ただし参考にはなった。

 

「最少の努力でやせる食事の科学」( オーガスト・ハーゲスハイマー)も、同様で、病気の時には、こういうことに関心を持つ。

 

「起業の科学 スタートアップサイエンス」(田所雅之)は、講義の参考のために買ったが、だいたい、既知の内容だった。ただ、カラフルで分かりやすい。

 

「ビットコインとブロックチェーン:暗号通貨を支える技術」(アンドレアス・M・アントノプロス)は、まさに、ビットコインの基本的な教科書で専門的内容、プログラムの書き方などがある。やや疲れる。