パイオニアの苦境

 

パイオニアが投資ファンドのベアリング傘下へ

 

パイオニアは12日、香港を本拠とする投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジアとスポンサー支援に関する基本合意書を締結したと発表。918日に250億円の融資を受け、9月下旬に返済期限を迎える借入金133億円の返済の他、運転資金に充当。10月末までに正式契約を結び、12月末までに、時価総額(12日時点で448億円を超えるベアリングに対する第三者割当増資(普通株または議決権を有する優先株を発行)500600億円調達する。

 

日経報道では、ベアリングの日本拠点代表シェーン・プリディーク氏は、「役員派遣も検討、投資期間は56年以上の長期になる」とコメント。融資分の株式転換も検討し、同社が株式の過半を握る可能性もあるだろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35297270S8A910C1TJ2000/

 

9月に入り、クルマ用FAを担う東北パイオニアEGをデンソーに売却(売却額109億円、売却益33億円)2月には電子部品製造装置子会社の売却、5月には、DJが使うターンテーブル等の機器を生産するマレーシア子会社パイオニア・テクノロジーの工場を、香港のコードレス電話機メーカーのVテックHD子会社に売却。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35131860X00C18A9916M00/?n_cid=SPTMG022

 

事業売却を加速

 

5月に、小谷前社長が辞任、森谷氏が社長になって以降、業績悪化が顕在化、1Q決算発表の8月には継続性の疑義がついた。その後、88日には、日経が、KKR傘下で、クルマ関係で、シナジー効果も期待できるカルソニックカンセイなど複数社に支援を要請、資本提携する検討に入ったと報じられたが、交渉は不調に終わったのだろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33953820Y8A800C1MM8000/

 

 この3年も、OPは黒字だが、NPは赤字、売上減の上、FCFの赤字は拡大している。B/Sも、自己資本比率は28%だが、連結に比べ単独の現預金が少なく、子会社株式の多くは簿価である。

 

 

パイオニアであることの宿命か

 

 もともと、高いオーディオ技術を持ち、トリオ(現ケンウッド)、山水電気と並んで、御三家と呼ばれた名門企業。1980年代に、レーザーディスクで躍進、カラオケ用で市場を独占。その後も、カーCDや、GPSカーナビなどの開発に成功、さらに、OLEDPDP-TVDVDなどでも世界初となるような製品を出し、ハイエンドの家電メーカーという地位を築いた。

 

 しかし、デジタル家電の大競争時代の中、価格急落もあり、苦戦が始まる。PDPは液晶TVとの価格競争、DVDでは台湾や中国メーカーとの競争が厳しかった。

 

デジタル大競争

 

安定収益のカーエレも厳しさが増し、また、昨今は、カーエレは、ADASなどの中で、競合は国内の同業でなく、むしろ、デンソーやボッシュ、コンチネンタル等、世界のトップTier1、さらには、グーグルやアマゾンとなり、1兆円もの巨額な開発費が必要になってきた。同社は、Lidarなどの技術はあるが、AIやセンサー、カメラ、データー等、より広範囲なものが求められる。その中では、自動運転などクルマは、成長分野ではあるが、同社が手掛けられる事業では無くなってしまったのかもしれない。

 

オンキョーとの関係

 

なお、パイオニアがホームAV部門を譲渡した、音響老舗のオンキョーも苦境に立っている。

 

日本の家電業界の苦悩

 

AVでは、ソニーが、ようやく、苦境を脱したが、収益源は金融とゲーム、半導体であり、セット端末型のTVもオーディオも楽ではない、パナソニックもリストラを繰り返し、成長の期待は、CASEや電池、シャープは鴻海傘下で再生、三洋電機も厳しくパナソニックに救済された。TVDVD等の船井電機も厳しさが続き、同業のアルパインは、アルプス電気傘下となり、ファンドと揉めている。

 

2000年代前半、いや2010年前後ですら、多くの学者やアナリストが、デジタル家電に期待したが、これまでも、拙著「日本の電機産業はこうやって蘇る」などでも、何度も主張したように、ジャパンストライクゾーンの右上の領域では、日本には勝ち目はないだろう。