VB投資やM&Aでの技術と時間軸、ファンドと事業会社の固有周期のミスマッチ

 

 ビジネスにおいて、「儲からない技術はいらない」、というのは、よく聞く話であり、ファンドやVCは、この基準で、ノーベル賞級の技術を持った会社でも、容赦しない場合もある。確かに、OBからノーベル賞受賞者を2人も出した神戸工業は、経営頓挫して、かつて富士通が救済したし、技術力があっても、経営がダメでは元も子もない。また、ストークスの分類(ブルッキングス)において、2012年科学技術研究所調査では、基礎研究どころか、基礎的原理も追及せず、研究用途も考慮しない研究が、日米比較では、日本に圧倒的に多く、問題だろう。

 

 しかしながら、儲かる儲からない、の問題は、技術だけでなく、技術と経営の掛け算であり、いろいろなアプローチで技術を活かすことは重要だ。

 

その技術だけでは、ダメでも、他の技術との組合や、ビジネスモデルで生きる場合もあり、その技術を生み出す技術者のリソースが、VB投資やM&Aの目的である場合もあろう。

 

 さらに、時間軸が、投資家と事業会社やメーカーで大きく異なる場合がある。投資家では、5年でも長期投資だが、事業会社にとっては、長期研究は10年以上だろう。このギャップはあまりに大きい。

 

 そこで、ファンドタイプにより、投資家回収の時間軸(ファンドの固有周期)がどの位差があるのかを論考する。

 

 まず、上場株式投資では、2012年現在、ほぼ1-2年であり、日本は1990年代前半では、4年以上の期間もあり、90年代は概ね3年前後だったが、2000年以降、短期化し、1年是で推移。

 

 ファンドの種類により、上場株投資は概ね1-2年、PE4-5年、ベンチャーでは、6-7年といったところだろう。国別では、日本が短く問題である。これは、投資先の事業や企業の固有周期との適合性も重要であり、早期の回収を目指すと、リターンが悪化する可能性がある。

 

この日本の投資家の短期傾向は、上場株式では、ガバナンスやGPIF存在で改善されつつあるかもしれないが、PEVCでは問題であり、CVCや官民ファンド等が、5年でEXITさせたい場合の受け皿となることで、ファンドと事業会社の固有周期のミスマッチを解消すべきかもしれない。