高校数学の行列とネットワーク科学ブーム離陸~数学教育の失われた10年

MOTで、30歳から50歳代の社会人学生に、ネットワーク科学のイントロを紹介、簡単なPythonプログラミングとエクセルでの実践的演習を行ったが、技術者も含め、多くがネットワーク科学を学んだことが無く、Pythonプログラミングも未経験であることに驚いた。部下が行っており、認識はしているが、手触り感が無いわけだ。

これは、ネットワーク科学の離陸が2005年頃であり、2010年頃までは、理系の大学でもカリキュラムに入ってなかっただろうことが背景にありそうだ。それゆえ、30歳以上は、会社に入ってから、であり、専門でなければ、勉強する機会が無かっただろう。理系のこうした基礎は20代でないと大変ではあろう。

他方、衝撃を受けたのは、ビジョナリー妄想の授業で、ゲストスピーカーの東大の伊東先生から、高校数学で、2012年から2020年まで行列を教えていなかったということだ。これは、認識不足を恥じるが、確かに、当時、話題になったことは思い出したし、心ある方からは、指摘されていた。

行列すら教えない高校数学に日本の技術軽視の一端を見た(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH (nikkei.com)

ネットワーク科学と「行列」は極めて密接で、AIDXには不可欠である。しかし、日本では、世界で、自然科学(電子、情報、材料、など広い)だけでなく、人文社会にも、ネットワーク科学が普及する2010年頃に、また、この時期は、これを応用したグーグル検索も広がり、GAFAMが巨大化しているタイミングである。その重要な時期に、AIの基盤となり、GAFAMの経営戦略を理解する上でも重要な、ネットワーク科学の基礎である、行列を高校数学のカリキュラムから外したのである。2020年に高校生だった人間、すなわち20歳は、ネットワーク科学に馴染むだろうが、それ以上の人間は、大学で大変だろう。

 

つまり、2010年頃前後、ギリギリ高校生で行列を学び、かつ大学でネットワーク科学を少しでも齧った人間以外は、日本では、今の20歳前後が育つまでは、殆ど、ネットワーク科学の教養をもった人材はいないということになるというのは大げさだろうか。