金融緩和時代の終わりとリーマン1年前の8月相場

 8月に入り、急速な円高と株価大幅安が起こった。円高の背景は、「もしトラ」のドル安政策の懸念、160円を超えた水準での政府の巨額な介入が効き、日銀の利上げ幅は想定線だが、植田総裁の更なる利上げの可能性のタカ派発言、米の景気後退リスクでのFRB利下げ前倒し観測などである。植田総裁のタカ派発言とFRB利下げ前倒しは想定外だった。このため、「ミス渡辺」と言われるような個人の為替トレーダーも含めた投機筋が円売りショートポジションの手じまいをしたのだろう。

 株価大幅安は、日経平均の大きな構成要素であるハイテク株が、円高メリットが大きいと認識され、かつ米国景気依存度が高いことに加え、植田総裁がタカ派である場合のリスクもあるだろう。政治が空白の場合は財務省や日銀が強くなりがちであり、アベノミクスの終わりどころか、金融引き締めに転換する可能性も否定できず、かつ財政規律ならば、「半導体祭り」も終わる懸念もある。米でも、トランプなら台湾やTSMCには厳しそうで(ただ、その場合は、日本のデバイスメーカーにはプラスも多いのだが)、世界の「半導体祭り」が終焉するかもしれない。

 今回、やや驚いたのは、僅かな金利で、為替水準と日経平均の乱高下が大きいことである。もしかしたら、想定以上に日本企業の体力は衰えており、金利の弾性値が大きいのかもしれない。