2016年3月9日 東芝メディカルシステムズはキヤノンが優先交渉権

 

報道や東芝IR開示資料によると、9日の役員会で、東芝メディカルシステムズ(以下、TMSC)は、キヤノンに売却される方向である。優先交渉権の締切は318日。同時に、東芝医用ファイナンス(TMSC35%、興銀リース65%)について、興銀リースからの買取を発表している。医療ビジネスは、リースが重要であり、病院などでは鍵になる。ここを、キヤノンがどうするかも重要だろう。

 

キヤノンHPの開示はまだであるが、37日の説明会資料では、医療分野は、遺伝子検査装置としてだけの記述であり、グラフにもあまり織り込んでない。これまでは、コピーもデジカメもダメで、ずっと横這いだったが、この1年でAXIS買収も良い買い物だし、トッキ、アネルバ、新規が育ってきている。http://web.canon.jp/ir/strategies/event.html

 

http://www.circle-cross.com/2016/02/06/201624-キヤノンの決算説明会-127日開催-と経営重心/

 

もともとは富士フイルム説が多く、弊社はファンドに売った後、国内再編と上場がいいと考えていたが

 

マスコミやその他では、富士フイルムが有力との見方が多かったが、①企業価値評価額、②手続きの確実性(独禁法クリヤと、カネ払い)から、キヤノンを選んだことになる。

 

これは、類似の製品もあり、既に医療部門が大きく、TMSC側の独自性がでない可能性もある富士フイルムより、キヤノンは、医療の売上が小さいこともあり、TMSCの独自運営が可能だ。キヤノンが買収先を、任せて経営することは、すでに、トッキ、アネルバ、マシナリ、などで実績がある。また、過去には、SEDで東芝とキヤノンは共同開発の実績もあり、それ自体は失敗したが、これを通じて、御手洗会長の東芝への評価は上がったという。

 

経営重心®が違っても独自運営なら問題ない

 

 12月末時点では、時間(決断力)や経営重心からくる相性を懸念していたが、全社は御手洗氏の決断であり、後者は、経営重心®が異なっても、その事業の独自性を認め、ホールディングス的な運営するのではあれば問題はない。

 

弊社では、フェアバリューの5000億円相当、上限6000億円という中で、経営重心®の観点や医療事業の特殊性から、デジカメやOA機器など重心が右上の富士フイルムやキヤノンよりも、ファンドに売却し、そこから国内の他の医療機器メーカーを買収して、国内医療機器産業を再編、将来は、TMSCの上場を視野にいれることが望ましいと考えていた。しかし、7000億円はファンドには高かったのであろう。

 

http://www.circle-cross.com/2015/12/30/20151230-東芝のヘルスケア事業とtmscの価値/

経営重心®では、医療機器は、ちょうど、露光機や、トッキ、アネルバなど製造装置に近く、これらの同様の経営でいい。その意味でも、キヤノンも、トッキやアネルバなどと同様に任せればいいのだ、という安心感があるだろう。やや割高な分の1000-2000億円分のシナジーをキヤノンとどう計算できるかだろう。生産技術や海外の販売に自信があるキヤノンは、そこで強化しようとするかもしれないが、経営重心®が異なれば、モノ作りも販売も別物であり、経営や運営は、任せておくことが肝要だろう。特に、TMSCは会計問題もなく、業績は堅調であり、なおさらだ。 おそらく、シナジー効果を出すとすると、TMSCそのものではなく、元来、東芝にあれば、そこで発揮しようとしていたIT部門とのシナジーに近いだろう。ウェアラブルや、カメラ、OAなど、キヤノンの既存ビジネスの中に、どうヘルスケア的な知見を入れていくかではないか。それによって、キヤノンの経営重心®や、文化カラーに刺激を与え、多様化することが期待される。リースや、保守では似ている面もあり、そこでのシナジーは大きいはずだ。